「池田温泉」は旅館事業者の“夜逃げ”をどう捉えるのか(左は池田温泉HPより、右は夜逃げする「温泉旅館たち7月30日深夜、バンを入り口に置いて荷物を搬入し、夜逃げていたA氏川」オーナー・A氏)
岐阜県揖斐郡池田町にある「池田温泉」。池田町が運営するこの温泉は、ヌルヌルとした肌触りの泉質が人気で、多くの観光客が訪れている。
「池田温泉 新館」の2階、3階部分にあるレストランと宿泊施設は2019年に「株式会社たち川」が町から委託を受ける形で運営していた。地元出身のオーナー・A氏の手腕で、1人1泊4万〜5万円ほどかかる高級旅館「池田温泉旅館 たち川」として、人気を博していた。
しかし7月31日、「池田温泉 新館」の入り口には〈事業を停止することとなりました〉と記された1枚の紙切れが貼られていた。前の日の夜中11時頃には、旅館から運び出した段ボールを車に詰め込むオーナーの姿が……事実上、“夜逃げ”したのだ。旅館が突如たち消えたことで、池田町は混乱のさなかにある——【全3回の第3回。第1回から読む】。
「池田温泉」支配人が語った困惑
1階は町が運営する日帰り温泉(現在も運営中)。2階と3階にレストランと宿泊施設があった。突然閉鎖されたのはその2階、3階部分だ。
「池田温泉旅館 たち川」は、経営がうまくいっていなかった可能性がある。A氏のもとには、池田町長から「督促状」が届いていたのだ。NEWSポストセブンが入手したこの督促状は、7月25日付で以下のように書かれている。
〈5月分までの施設使用料等の未納が7月25日時点で2,288,097円ございますので、(中略)7月31日(木)までに金融機関または役場会計課にて納入していただきますようお願いいたします〉
「池田温泉旅館 たち川」の従業員は、「A氏は、『(委託元の)町にバレないように旅館を閉める』と言っていた」と証言する。
「池田町に対する未納金については納入せずに、期限までに夜逃げする手筈を整えたんです。私たちも、『7月30日以降の予約は全てキャンセルしてもらうように』と指示を受けていました」
がらんどうと化した旅館を前に、町の職員でもある「池田温泉」の支配人は途方に暮れていた——記者が話を聞いた。