ボートピープル、脱走技能実習生のアジト。たくさんのしょっぱい涙を知る中2の夏休み
お盆休みに帰省をする人も多いのでは? 移動の時間に読書でもしてみるのはいかがでしょうか。この夏におすすめの新刊4冊を紹介します。
『給水塔から見た虹は』窪美澄/集英社/2090円
古い団地住まいの桐乃。ベトナム3世のヒュウ。二人は中学のクラスで孤立している。桐乃は周囲に疎まれる聡明さで、ヒュウは貧困と乏しい日本語で。ここから脱出したい二人がある事から、山奥や海辺の町でつかの間の夏休みを過ごす。桐乃と彼女の母の2世代にわたる異文化共生の話でも。読み終えて思う。無知は罪ではないが、知ろうとして初めて希望が明日への虹になると
グローバル、デジタル、パンデミック。不確実な世界で生き抜く確実な力とは
『尾木ママ流 生きるヒント伸ばしたい9つの力』尾木直樹/きずな出版/1760円
世界が不透明さを増す中、尾木ママは「楽しむ力」「失敗する力」「言葉の力」など人生を明るくする9つの力を挙げる。中でも「認める力」を熟読してしまった。私は外国人差別やヘイトをする人が嫌。尾木ママは言う。「相手を尊重し」「立場や考えを理解しよう」と。そっか、尊重が足りないのか……。でもやっぱり共感できなくて苦しい。なにかの力が足りなくて苦しい人にもヒントをくれる。
19日間で(独り占め)ホールケーキ5個!そりゃなるでしょう、脂質異常症にも……
『そして誰もゆとらなくなった』朝井リョウ/文春文庫/825円
ゆとり世代のエッセイシリーズ第3弾。著者の下半身ネタは爆笑もので、本書は痔瘻から幕を開け、会社員時代の悲劇に飛び、海外の友人宅に及ぶ。ブツの入ったビニール袋を持ち、ゴミ箱を探して深夜のロスを徘徊したとは。クリスマスケーキを(順次届くよう)5個注文するほど甘党過激派だったのにもびっくり。過剰摂取と過剰排泄。過剰さこそ人生だ、と言いたくなりました。
『新・教場』長岡弘樹/小学館文庫/847円
義眼の刑事・風間公親の非情と温情。来年公開の木村拓哉主演の映画も期待大
刑事指導官として名高い風間公親は本書で警察学校に赴任、警察官未満の若者達をふるいにかけていく。人命救助で表彰されたことのある矢代、実家が町工場でマル暴刑事志望の笠原、格闘家の道を断念し県警に就職したブラジリアン柔術の若槻など、彼らを非情な眼(と温情)で選別するのだ。卒業式が最終講義(ふるいの場)になるのも極み。エピローグは次作に繋がる朗報。
文/温水ゆかり
※女性セブン2025年8月14日号