連続強盗の指示役とみられる今村磨人(右)、藤田聖也(左)両被告。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
ものすごい剣幕で怒鳴り散らしていた
その今村被告は収容所内で「和牛のキヨト」と呼ばれ、羽振りの良さが噂になっていたようだ。2022年当時はテレグラム上で「ルフィ」と名乗り、日本の実行役を操った。同年3月ごろの実行役とのテレグラムメッセージが証拠として法廷で読み上げられた。
〈ルフィさんはどんな立場の方ですか?〉(実行役のメッセージ)
〈トップです〉(今村被告の返信)
トップとしては迂闊な言葉に思えるが、フィリピンの収容所では、この今村被告に渡辺グループが加わり、水面下で反目しながらも、今村被告のビジネスを乗っ取りながら次々と広域強盗に及んだということのようだ。渡辺グループの面々は今村被告に「覚醒剤を薦め、依存させていった」という話も弁護側冒頭陳述で明らかにされている。
日本で実行役が被害者宅に突入する際は、テレグラムを通話状態にして、実行役にリアルタイムで指示をしていたのは今村被告と藤田被告だ。その指示には、トップとしての落ち着きは見られず、感情的に怒鳴り散らすこともあったと、実行役がかつて裁判で語っていたが、藤田被告も同様の証言をした。
「一度撤退した現場に、キヨトくんが(もう一度)行けと実行役に指示していて、ちょっとびっくりした。そんなことすると警察が来て捕まるかもしれない。でもすごい剣幕で(実行役に)怒鳴り散らしてたので言えなかったです」(藤田被告の証言)
小島被告や藤田被告によれば、そんな今村被告は逮捕後、事件について口を閉ざしているという。
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◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)