父と娘の二人三脚で回す“ガシ”の良心

「早世した妻が、“あの子は料理の才能がある”と言い残しました」と店主が話す。堺のグルメを唸らせる料理は、娘の裕加さんによる毎朝8時からの丁寧な仕込みが要(かなめ)。開店後も台所でフライパンを振る。このお店は、父娘の二人三脚で回っている。

 裕加さんは「自分がもうひとりいれば、と思うほど忙しいです。お父さんも、お客さんと盛り上がるのをそこそこで切り上げて、もう少し手伝って欲しいです」と笑いながら素直な要望を口にした。

店主の泰司さんの温かい人柄に惹かれる

店主の泰司さんの温かい人柄に惹かれる

 堺の夜が盛り上がる背景について、店主が歴史を解説してくれた。

「大きな製鉄所があったからですわ。戦後に八幡製鉄の堺製鉄所ができて、それが新日鉄になった。鉄鋼生産の拠点として、最盛期には三交代制で工場が24時間動きっぱなしやった。そやから、8時間ごとに勤務を終えた工員たちが大勢ダーっと来るわけですよ。腹を満たさなあかんゆうて。それでこの辺りは飲み屋が増えた。酒屋も多かったし、立ち飲みが多いのもそのせいです。ガシはそれに応えてきたんやな」

 冒頭の医療事務の女性は「堺に生まれた女やから、難波ではゆっくりよう飲まん。たまには行くけどな、難波はかっこええから緊張すんねん。堺はちょうどええ男と女が、ちょうどええ店でリラックスして飲むねん。安らかでええやんか」と笑った。地に足がついた一杯がこの街にはあるのだ。

「ガシ飲み」が仕事の疲れも吹き飛ばす

「ガシ飲み」が仕事の疲れも吹き飛ばす

 テレビで大相撲が始まると、老若男女が一斉に画面に釘付けになる。誰の応援だろう。「そら、みんなで大阪出身の宇良関を応援してんねやんか。技が力を上回ったら、スカッとするやん」(50代建築業)。熱のこもった取組に店内が一体感に包まれる。

「ほな今夜も機嫌よう飲みましょう。ここの旨いアテにはスッキリ味のドライが合うねん」ガシの夜は焼酎ハイボールで乾杯だ。

丁寧に仕込まれた料理には辛口が合う

丁寧に仕込まれた料理には辛口が合う

■西口酒店

【住所】大阪府堺市堺区南花田口町1-2-13
【電話】072-233-0445
【営業時間】16~21時半 日祝休
焼酎ハイボール370円、ビール大びん560円、手打ちそば700円、くじらのベーコン600円、マグロとホタテとヒラメのお作り1200円

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