そこで私が、小山に対して、「今すぐ地主と契約させるから今日お金を持ってこい」と電話するように指示し、その場で電話させた〉(4月11日消印)
主犯とされた土井を動かし、カミンスカスには電話をするよう指示していたとする証言だ。
有罪判決を受けた実行犯のひとりの供述調書によれば、土井は積水ハウスとのやり取りの最中、北田に何度も「来週の契約段取りまとめます」「スッキリアドバイスに、感謝します」などとショートメールを送っていたという。
ただし、北田は積水ハウスとの商談や仮決済を行なっていた2017年3~4月頃は海外へ観光旅行に出ておりメールに一切返事をしていない。北田は「アドバイスは電話で済ませた」とし、土井からのメールは、
〈迷惑メールとしか思っていませんでした。事件になった時に捜査の対象になるし、起訴の材料になると思っていました〉(5月8日消印)
と綴っている。自らの手を汚さず、詐欺を成功させるための協力をしたとする北田。積水ハウスから騙し取った金は、中間業者に渡した残りの40億円を分けたとし、
〈○小山 10億 ○土井、北田 10億 ○マイク 3億くらい残り、忘れました〉(5月23日消印)
と説明した。これらの分配は〈土井さんが案を出して私の同意を得て実行しましたが、私はあんまり真剣に考えていなかったので、正確さを欠いていると思います〉(同前)とした。
説明が事実ならば、主犯格とされる土井や小山と同額、内田マイクの3倍を得ているのに、不起訴となったことになる。
事件で懲役4年の実刑を経た実行犯の1人は北田について「裏で全員を操っていたリーダーだったのに、土井やマイクを出し抜いて上手くやりましたよね」と評した。
今は行政書士の勉強中
私は7月某日、北田に面会した。冷房のない刑務所内ではランニング姿に作業ズボンとラフな姿だったが、その語り口には余裕のようなものが感じられた。「土井やカミンスカスは今も否認し続けている」と伝えると、北田は「往生際が悪いですね」と笑った。
「土井さんはプライドが高いから。私は“実”さえ取れれば私の仕事である必要はないですから」