お笑い米軍基地のコント「保安検査場」(撮影/西野嘉憲)
世の中を「変える」のではなく
戦争はなくなると思うかと問うと、まーちゃんは冷めた表情でこう即答する。
「今のところないと思います。無理です」
しかし、まーちゃんはいたずらに悲観したりはしない。
「僕は自分の力で何かを変えようと思っているわけではないんですよ。だから今の状況に絶望したり、限界を感じたりすることはない。理想を語るつもりはないんです。たかが芸人なんで。それは政治家の役割でしょ? 身の程は弁えているつもりです」
ただ、こう付け加えた。
「チャップリンも『独裁者』を作ったとき、世の中を変えようとしたわけではないと思うんです。そんなことをする芸人は、その程度だとも思っているんで。結果的に変えた部分はあったかもしれませんけど。ただ、変えるつもりはなくても、世の中に忖度して何も言えなくなるようでは芸人とは言えないじゃないですか」
変えるつもりはない。ただ、黙っているつもりはもっとない。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
中村計(なかむら・けい)/1973年、千葉県生まれ。ノンフィクションライター。『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』『笑い神 M-1、その純情と狂気』『落語の人、春風亭一之輔』など著書多数。