お笑い米軍基地を主宰する「まーちゃん」こと小波津正光(撮影/西野嘉憲)
那覇出身の芸人「まーちゃん」こと小波津正光が率いる「お笑い米軍基地」は、2005年の旗揚げから一貫して、米軍基地や戦争をテーマにコントを続ける。主宰のまーちゃんは、戦後80年の現代社会をどう見つめ、どうコントに落とし込んでいるのか。ノンフィクションライターの中村計氏が、その思いに迫る。(前後編の後編。前編から読む)
* * *
まーちゃんはこんな気になる指摘をする。
「沖縄の戦争体験者はみんな言うんですよ。今の雰囲気が『戦前に似てる』って。僕にはその空気感まではわからない。ただ、この制度はおかしいんじゃない? というのはわかる。たとえば、今、民間の飛行場をアメリカ軍や自衛隊がどんどん使えるようにしていってるじゃないですか。そうすることによって新しい基地をつくらなくても、そこを基地として使えるようになる。明らかに戦争をしやすくなっていってますよね。太平洋戦争の反省から民間の空港と港を軍が利用することは禁止にしたのに、そんな過去はなかったことのようになっている。これはすごく危険なことなんだろうなとは思っています」
今回は、そんな状況を「保安検査場」というコントにして、笑いをまぶしつつ警鐘を鳴らしている。まーちゃんは続ける。
「戦争に向かっているときって、おかしなことがおかしく見えなくなってると思うんですよ。ひょっとしたら民間空港の軍の利用をどんどん許していってしまったことが将来、やっぱりあのとき、おかしな方向にいってたよね、ってなってるかもしれない。だから、芸人はどんなときでも冷静で、客観性を持っていなきゃいけないと思うんです。おかしなところに気づかなくなってしまうので。その目がなくなったらコントもつくれなくなっちゃいますからね」
お笑い米軍基地は20年間、県民の支持を受けてきた。しかし、20年前と今、県内の米軍基地を取り巻く状況は変わらないどころか、より県民が望まぬ方向へ進んでいるようにも見える。