オープンカー問題の現状は
宮城野部屋の存在が消し去られようとするなか、白鵬氏は存在感を見せようと動いているようだ。相撲ジャーナリストが言う。
「白鵬氏の退職後、優勝パレード用のオープンカーである特別仕様の最高級車・センチュリーをトヨタ自動車が引き上げる可能性が取り沙汰されていた。白鵬と親交のある豊田章男会長が、6月の株主総会でそう示唆する発言をしたのです。それが一転、名古屋場所でも使えることになったのですが、白鵬氏が若手親方衆に頼まれる形で豊田会長に使用継続をお願いして実現したことだという。
また名古屋場所中、白鵬氏は元弟子にあたる草野に連日ボイスメッセージを送っていた。優勝の可能性があった14日目に白鵬氏は名古屋入り。草野に千秋楽の高安戦の攻略法を直接伝えたようです。自らが尽力して使えるようになったオープンカーでの優勝パレードに、白鵬氏本人が登場して見届けるという演出するのではないかといわれていた。ただ、結果的には琴勝峰が安青錦に勝って、草野が賜杯を抱くことはなかったわけです」
元弟子へのメッセージ送信やオープンカーをめぐる動きなど、白鵬氏は退職後も協会とのパイプをつなぐべく動いているように見える。前出の相撲ジャーナリストはこう言う。
「まだ退職してから1か月ほどだが、白鵬氏の存在がどんどん薄れており、その危機意識はあるのでしょう。草野の活躍も現師匠である元横綱・照ノ富士の指導の賜物とする報道もあるし、同部屋で日大の2年先輩にあたる尊富士や熱海富士のアドバイスがあったともされる。安青錦の活躍や優勝した琴勝峰の登場など、次々とスターが誕生。その1人に草野がいるので、かろうじて白鵬の存在感が残っている程度。
白鵬氏にも、相撲協会を離れたらタダの人だという感覚があるのではないか。少年相撲の国際大会『白鵬杯』を国技館で開催するには協会と完全にケンカ別れするわけにはいかず、パイプをつないでおく必要があるわけです。
ただ、一連の動きがどこまで有効かはわからない。トヨタのオープンカーの件も白鵬氏の功績とされているが、名古屋場所はトヨタの地元だし、相撲協会と共催する中日新聞社も関係を考慮したはず。直前に石川県津幡町で行なわれた大の里の横綱昇進パレードではベンツのオープンカーが使われているくらいですから、執行部は“白鵬がそんなに頑張らなくてもいいのでは……”という感覚でしょう」
「世界相撲グランドスラム」という夢の実現に向け6月に新会社を設立した白鵬氏だが、視界良好というわけにはいかないようだ。
※週刊ポスト2025年8月15・22日号