壮絶な撮影現場の舞台裏を明かしてくれた
──小沢さんの半生が綴られている自伝『波乱を愛す』では、30代なかばに制作会社を設立したものの倒産。借金を抱えても自己破産はせず、懸命に働いて返済する道を選んだことも明かしています。出演作が多いのは、それが理由でもありますか。
「そう。オレが生きてがんばってる限りは何とかなる、と思って必死で働いた。ただ、倒産したのは事業がうまくいかなかったからじゃない。会社は順調だったんだ。ところが、資金繰りに困った仕事仲間にお金を貸したんだ。周りからは『貸すな』と言われたけど、貸すって決めて貸したのはオレ。だから逃げるつもりはなかった」
──そんなことがあったとは驚きました。
「厳しい取り立てもあったけど、無い袖は振れないからどうしようもない。会社で贅沢はしていなかったし、住んでた家も取っ払って、友だちの会社のロフトに住ませてもらってた。仕事現場には、その友だちが車で送ってくれた。40歳前後の頃だね。
でも、落ち込んで、ただ暗い顔をしてたわけじゃない。普段と同じ。女の子をロフトに連れ込んだ翌朝、社員がパソコンを打つカシャカシャいう音で目が覚めたこともあった。借金抱えてても、それとこれとは別なんだよ。『おまえ、社員が出社する前に女は帰せや』って言われたけどさ(笑)」
──覚悟を決めたんですね。
「人間の本性を見たね。困っているときに助けたのに『約束の期日までに払ってください』と取り立てのようなことを言うヤツがいるかと思えば、金に困っていても『いつでもいいですから』と気遣ってくれた人もいた。この恩は一生忘れないし、この経験はオレの大きな財産になった」