「生きづらさ」を感じた場面について語った
さまざまに降りかかる「生きづらさ」
──それまではタバコとか?
タバコはガンガン吸ってた。中学生の頃には、意気がってシンナーも吸ってたよ。でも高校生になったら、いつまでもガキみたいに吸ってるのはカッコ悪いって、自然に卒業できたんだよ。シンナーが卒業できたという体験があったから、覚醒剤も卒業できると思ってたの。1回ぐらいだったら、と思ったのが命取りだった。
──1回じゃ済まなくなった。
説明しづらいんだけど、(薬をやると)体じゅうの産毛がすべて毛羽立つイメージ。覚醒剤というけど、本当に細胞が覚醒する感じがある。報酬効果っていうみたいなんだけど、感じたことのないこの「報酬」が脳に焼き付けられるんだよ。すると、もう一度報酬を得たい、もう一度……と報酬に対する渇望が出てくる。ここからはじまるのが負のスパイラル。
──ただ薬物に手を染めるきっかけは「ギャグが思いつかない」という悩みが根底にあったわけですよね。その「報酬」は、ギャグを作るという悩みとは関係なくないですか。
それが、不思議に思いつくんだな。俺は天才じゃないかと思えて、自分がスーパーマンにでもなった気持ちになる。
ただ、刑務所の中ではそれが一転、世間が全部敵に回ったように感じてね。
(当時の)嫁のお母さんから手紙が来て、「外に洗濯物が干せなくなりました」って書いてあったんだよ。野次馬からの批判がすごかったんだろうと思う。学校では子どもたちが過ごしにくくなって転校しなきゃいけなくなったとか、家も引っ越さなきゃいけなくなったとか、家族も生きづらくさせた。何億円という賠償金も払わなきゃいけない。ぜんぶを解決できる算段もないし、もう死ぬしかねえなって。