元フィギュア日本代表で、タレントの高橋成美さん
「やり切った」と思わなくていい
さまざまな挑戦をしている高橋さん。タレントとして活躍中の今も、女優を諦めたわけではまったくない。
「フィギュアをやっている頃から、何かを目指すなら何かを諦めないといけない、という考え方に納得できなくて。オリンピックも世界選手権も1位を目指すし、学校の勉強でも1番になりたいし、走るのだってもっと速くなりたい。なんでいっぱいのことを求めちゃいけないの、とずっと思っていました。
いろいろ制約があるとしても、目指すのは自由ですよね。目標は人から認められて目指すものじゃない。スケートを始めたのだって、最初からオリンピックを目指したわけではありません。だから今も、女優を目指していますし、バラエティでも活躍したいし、全部が本気。続けてみないとわからない。時間がかかるというだけです」
現役のフィギュアスケート選手としては引退したが、「やり切った」とは思っていない、と高橋さんは言う。
「やり切ってから次にいくべきだ、とは思わないです。私は世界でトップを取ったことがあるわけでもないですし、引退の大きな理由も怪我。その意味では中途半端かもしれない。ただ、目の前のことに真剣になっていれば、それがどこかで繋がる時がくることだけはハッキリと言えます。だから、とにかく今やりたいこと、やるべきことを極めるという感じです」
元フィギュア日本代表で、タレントの高橋成美さん
ピークは小学4年生
アスリートには“ピーク”という単語もつきまとう。高橋さんにとって、“ピーク”とはどういう意味を含むのか。
「あえていうなら、私のピークは小4です。ピークって、すべてに疑いがなく、万能感がある時期じゃないですか? 年齢が上がるにつれて、挑戦してもうまくいかないからやめようとか、リスクを考えるようになる。目標設定がハッキリしていて、精神的に無敵だったという意味で、小4です。しかも人生で唯一告白されたのも小4なんです(笑)」
笑いを誘いつつ、高橋さんは「本当は“いちばん”も“ピーク”もないと思っている」と続ける。
「世界一を目指すアスリートは、その試合、ジャンルにおける頂点はあります。ただそれが人生のピークかどうかの判断は価値観によりますよね。私はいつだって誰よりも劣ってる部分があるし、だけど誰よりも優れている点もあると思ってます。だから、ピークなんてないんです」
最後に「やっぱり、『ピークは今』って答えればよかったかな!?」と茶目っ気たっぷりに焦ってみせる高橋さん。直近の目標をきくと、「足が速くなりたい」とのこと。
「芸能界で走る人といえば高橋、と言われたい!」
何ごともやると決めたからには全力疾走。今日もどこかで高橋さんは走っている。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】高橋成美(たかはし・なるみ)/元フィギュアスケートペア日本代表
3歳でスケートを始める。小学4年生のとき父の転勤に伴い中国へ。当地でペアを始める。
2008年から2014年にかけて全日本選手権で優勝。
2011-2012シーズンにはグランプリファイナルに日本のペアとして初めて進出、世界選手権では日本ペア初の表彰台となる銅メダルを獲得。2014年、ソチオリンピックに出場。
2018年3月に引退し、その後はJOCアスリート委員として活動しながら2021年にJOC理事に最年少で就任し、任期を経て、 2023年6月からJOC評議員・日本オリンピアンズ協会(OAJ)理事に就任。
現在は、テレビでの大会中継の解説を務めるほか、タレントとしてバラエティ番組に出演するなど、多岐にわたる活動を展開している。
「海辺の町で暮らしたら、人生は変わるのか?」三浦半島に本気の移住に挑戦(高橋成美さん提供)