フィギュアスケーターが「女優」を志した納得の理由
そんな高橋さんがまず志したのは、「女優」だった。
「フィギュアスケートは、言葉を発さないでどれだけ表現できるかという世界です。この音楽に最適な表現はなんだろうと考えるのも、踊るのもとても楽しい。ただ、いつも『言葉を発してみたらどうなるんだろう』という興味がありました。それで、演技に挑戦してみたのですが……そんなに上手じゃなかったですね(苦笑)。何回もワークショップに通ったんですけど、ぜんぜん棒読み。レッスンは楽しいんですけど」
一方で、高橋さんの元にはバラエティ番組の仕事が舞いこむようになる。
「“元アスリート”ということで何度かバラエティ番組に呼んでいただけるチャンスがあり、いざ出てみると刺激がたくさんありました。バラエティ番組は、どう表現したら良いか、自分が目指すパフォーマンスを模索する感じが、スケーターがスコアシートを分析する感じとも似ていて、学びが多いです」
「海辺の町で暮らしたら、人生は変わるのか?」三浦半島に本気の移住に挑戦(高橋成美さん提供)
常識が当てにならないことを、体で知っている「強さ」
すべてに全力で臨む高橋さんの姿勢がスタッフの間で評判となり、『ドッキリGP』や『クイズ! あなたは小学5年生より賢いの?』(日本テレビ系)など、さまざまな企画が届くようになった。また自身でもWEBメディア『地元良品JOURNEY三浦半島篇』の三浦半島移住企画をオーディションで勝ち取るなど、アグレッシブに活動の幅を広げている。
「三浦半島への移住では、初めて“自立”にチャレンジしました。それまで1人暮らしをしたことはあっても、結局身の回りの世話は親に甘えることも多かったんですよね。最初は何もできない自分に愕然としましたが、続けていくうちにアジや金目鯛が捌けるようになったり、自分でレシピを考えて料理したり、いろんなことができるようになっています」
“引退したら自分には何もない”と思っていたという高橋さんだが、スケートで培ったものがたくさんあったことに気づいたと明かす。
「たとえば目標を設定する力。料理も目標を設定して、そこに向かって作っていくわけですよね。難しいといわれる調理も、やってみないとわかりません。フィギュアスケートでも、難しい技と簡単な技がありますが、簡単とされている技が不得意なのに、難しいことができる人もいる。私にもそういうことがありました。
常識が必ずしも当てにならないことを体で知っているから、ひとまずチャレンジしてみる。それが自分に合うか合わないかはその後考えればいいんです。だから私、生の魚を捌いたことはあるけど、まだパスタを茹でたことはないんですよ」