警視庁府中運転免許試験場(写真提供/イメージマート)
6月に山梨県の富士スバルラインで起きた観光バスと乗用車の衝突事故は、乗用車を運転していたのが茨城県に住むパキスタン人だった。彼がどこで免許証を取得したのかは不明だが、パキスタンはジュネーブ条約非加盟国なので、外免切替を利用していた可能性があるとSNSで話題になった。海外から帰国した日本人を想定したものととして長く運用されてきた外免切替が、ようやく制度改正となり、10月1日からは短期滞在には認めず住所確認を厳格化、簡単すぎると批判された試験(確認)も見直される。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、学科10問中7問で合格のうちにと駆け込みで外免切替にやってくる外国人たちについてレポートする。
* * *
「いまのうちね、難しくなる前の、いまのうちね」
東京都府中市、府中運転免許試験場(以下、府中)はお盆の期間中も多くのドライバーやドライバーを目指す人で賑わっていた。
やはりその中でも多いのが外国人の来訪者。予約制にしたため以前ほどの行列はないが、やはり数としては目立つ。そのほとんどが外国の運転免許証を日本の免許に切り替える「外免切替」の人たちだ。
後述するが外免切替そのものは何も悪くないというか、日本国内で運転しようとする外国人にとって当たり前のことだ。しかし日本など多くの国が加盟するジュネーブ条約(後述)とその非加盟国との間となると問題が発生する。
そのジュネーブ条約非加盟国のひとつである中国(香港、マカオ除く)、中国人の彼は妻と子供さんたちと来ていた。
もう日本は長いがとくに運転が必要な仕事ではなかったこと、駐車場も高い都内では余裕がないことから免許とは縁遠い生活を送っていたようだが、さすがに試験(正式には「確認」これも後述)が厳しくなると聞いて予約、駆けつけたようだ。
「いきなり50問なんて大変だし実技(正式には技能確認、後述)も厳しくなりそうだしわからない、わからないから早めに、いまのうち、いまのうちね」
何度も「いまのうち」と笑う彼。
彼の奥さんは中国の免許そのものを持っていないため外免切替の対象外だが、彼自身は「いまのうち」に切り替えるとのこと。奥さんはいつか免許をとりたいそうだが「日本で(免許を)とるのはお金もかかるし大変」と言っていた。「(こんなに簡単なら)中国でとっておけばよかった」とも。