日本では、普通自動車免許の平均取得期間は教習所に通う人で2~4か月と言われ、学科試験の合格率は約70パーセント。外免切替は1日で終わり、試験も90パーセント以上が合格する(写真提供/イメージマート)
中国はもちろん、ベトナムなどの一部地域によっては「簡単に免許くれる」とのことで「くれる」という表現を信じるならそれはジュネーブ条約どころの話ではない。
まあ、アメリカすら日本に比べれば州によってはとんでもなく簡単に免許が「もらえる」地域もあるので中国やベトナムばかりを言うのもなんだが、ずさんな外免切替によって、世界でもとくに厳しい免許制度・取得の国とされる日本の国際的な信用を損なってはたまったものではない。
日本人が多くの国で条件付きも含めて運転できるのはその厳しい免許制度と、それに合格したからこそである。それなのに、この国は何十年もずさんな外免切替を「放置」してきた。
実のところ、昨年ほどは府中で話してくれる外国人(とくにベトナム人)の方は減ったように思う。余計なことを言ってさらに難化が早まったり、前倒しとなったりすることを恐れているのだろうか。ベトナム人コミュニティの例だが独自のネットワークでそうした情報がまたたく間に広まる。フードデリバリーなど運転の仕事につくベトナム人は多い。先の中国人の方の言うように空港などの観光送迎もそうだ。
その中国人の場合は観光で訪れて民泊あたりを住所にしてお気楽に外免切替で「日本の免許証もらうツアー」的な旅行商品まで売られていたほどだが、これも10月から住民票が必要になり観光などの短期ビザでは外免切替が原則できなくなる(大使館関係者やレーシングドライバーなど証明・承認された一部職業の外国人除く)。
ちなみに知識確認は10問から50問、技能確認もそれまでより精査するとしている。その前段階の書類審査も厳格にするとも。
もっともそれも10月1日から、それまでの9月30日まで「いまのうちね」ということになる。
法律の穴をそこまで突くかと利用する
しかし長く日本に住む池袋の中国人料理人は「むしろよかった」とも話す。彼はちゃんと日本の教習所に通い免許を取得した。日本語も堪能で新作の劇場公開を機に『鬼滅の刃』に再びハマってアニメショップ通いの「日本通」だ。
「同じ中国人と思われたくないよ。旅行で来る連中も恥ずかしいと思う中国人ばかり。法律の穴をそこまで突くかと利用するのが中国人だ。中国人だからわかるんだ。恥ずかしい話だけど、貪欲なんだ。私は嫌だけどね」
すべてのジュネーブ条約非加盟国の外国人がそうではないが、抜け目なく日本の信用ある制度にフリーライドする一部の外国人がいる。こと免許制度に限らない。
しかしそれを可能にしてきた張本人は日本政府である。こんなものは「おもてなし」とか「差別」とかでなく単なるシステムの問題であり制度上の穴でしかない。外国人がどうこう以前にこれらを決め、許してきた政府の責任だ。
あまりにずさんだった日本の外免切替がようやく変わる。しかし10月1日から難化とはいえ、それまでの9月30日まで10問中7問正解で合格、運転の「確認」のままでいいのだろうか。
そして、その9月30日までの旧制度で外免切替したジュネーブ条約非加盟国の在日外国人の免許証――このまま仕事も含め、新制度における確認もないままに、日本で運転させてよいのだろうか。
●日野百草(ひの・ひゃくそう)/出版社勤務を経て、内外の社会問題や社会倫理、近現代史や現代文化のルポルタージュを手掛ける。日本ペンクラブ広報委員会委員。