『CDTVライブ!ライブ!』(番組公式HPより)

『CDTVライブ!ライブ!』(番組公式HPより)

他局の追随を許さない圧倒的な質と量 

 もう1つの成功要因は、他局にはないTBSの思い切った編成戦略。『CDTVライブ!ライブ!』はコロナ禍に突入した2020年3月に月曜22時台でスタートしましたが、視聴率が低迷し、1年後の2021年4月に月曜21時台、1年半後の2022年10月に月曜20時台に移動するなど、苦境が続く中、試行錯誤を続けていました。 

 そしてライブにこだわった演出がジワジワと支持を集め、推し活ブームの追い風も加わった2024年4月に放送時間を2時間に倍増。ゴールデンタイムで2時間の音楽番組はTBS初であり、民放全体でも約35年ぶりという思い切った編成で勝負に出ました。 

 特筆すべきは月3回程度のペースでしっかりレギュラー放送されていること。2時間のレギュラー番組にしても月1~2回程度の放送ではその意味はありませんが、『CDTVライブ!ライブ!』はしっかり放送回数を重ねていることに感心させられます。 

 さらに今夏の放送時間は圧倒的でした。まず6月30日と7月7日に2時間30分、7月14日に2時間、8月4日に2時間、8月18日に4時間、9月1日に3時間の放送。さらにTBSは7月19日にも8時間生放送の『音楽の日』を放送するなど、ライブの“質”だけでなく“量”でも他局を圧倒しています。実際、9月1日の放送が3時間であることが明かされたとき、ネット上に「あれだけ放送したばかりなのに、まだ3時間もできるの?」という驚きの声があがっていました。 

“推す力”の強いアーティストが集結 

 質と量の両方にこだわる番組だからこそ、キャスティング力も強みの1つ。事実、今回の出演ラインナップにはそんな番組のキャスティング力が表れていました。 

 人気絶頂のMrs. GREEN APPLE。Snow Man、SixTONES、Travis Japan、なにわ男⼦のSTARTO勢。熱狂的なファンが多く、世界を目指すBE:FIRST。旬の女性アイドルグループであるFRUITS ZIPPER、CUTIE STREET。K-POP男女グループのILLIT、BOYNEXTDOOR。SNSでバズった、ねぐせ。、M!LK。さらに実績十分のアイナ・ジ・エンドと緑黄色社会も出演します。 

 出演アーティスト発表の時点でネット上が盛り上がっていたように、“推す力”の強いアーティストたちを集結させられることが、支持や反響の大きさに直結。特にダンスボーカルグループのファンたちはTBSと当番組が所属事務所の垣根を越えて競い合えるきっかけになったことを覚えているだけに「別格の音楽番組」という認識の人が多いようです。 

 では、他局の音楽番組はどんな現在地点にいて、『CDTVライブ!ライブ!』とはどんな違いがあるのでしょうか。 

他局の音楽番組が抱える課題 

 テレビ朝日の『ミュージックステーション』は長寿番組らしい信頼感こそあるものの、「タモリを中心にした昭和から続く歌謡ショー」という構成は今さら変えづらいだけに、良くも悪くもアップデートされていません。 

 日本テレビの『with MUSIC』はスタートから約1年半が過ぎた今なお試行錯誤のまっただ中。今春に土曜20時台から22時台に移動しましたが、メインに有働由美子さんと松下洸平さんという人気者を立てたことで、音楽とトークの最適バランスを探している段階に見えます。 

 フジテレビの『ミュージックジェネレーション』は、そもそも過去の楽曲をフィーチャーする懐古志向のコンセプト。各局で量産されるカラオケバラエティなどの影響もあってジワジワと鮮度を失いつつあり、音楽ファンから評価の高い『FNS歌謡祭』と地続きの番組ではないことも影響力が限定的な理由の1つでしょう。 

 こうして他局の音楽番組を見ていくと、『CDTVライブ!ライブ!』がバラエティ要素を減らし、ライブファースト、アーティストファーストの方針を貫いていることがわかるのではないでしょうか。その方針はメインに人気タレントではなく自局の江藤愛アナウンサーを起用したことからもうかがえますし、この点も視聴者の支持を集めるポイントの1つです。 

 番組名にある「CDTV」というフレーズの“CD”“カウントダウン”は昭和・平成のムードを感じさせますが、そこに「ライブ!ライブ!」のコンセプトを追加・徹底することで令和のアップデートに成功したことが1人勝ちにつながったのでしょう。 

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。 

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