『CDTVライブ!ライブ!』に出演するMrs. GREEN APPLE(公式HPより)
各局が音楽番組を相次いで制作し、“令和の再ブーム”が続く中、異彩を放っているのが『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)だ。ネット上の反響などから「1人勝ち」とも言われるほど高い評価を受けているのはなぜか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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2014年春、日本テレビが『with MUSIC』、フジテレビが『ミュージックジェネレーション』とゴールデンタイムの音楽番組がそろってスタートしました。さらにTBSも『CDTV ライブ!ライブ!』の放送時間を2時間に拡大し、長年放送されていたテレビ朝日の『ミュージックステーション』を合わせた主要4局の音楽番組がゴールデンタイムにそろい踏み。2010年代には「終わった」と言われ、ゴールデンタイムでの絶滅が噂された音楽番組が「再ブーム」と言われるほどの復活を遂げました。
しかし、そこから約1年半が過ぎた現在、ネット上の反響やアーティストの支持などで「1人勝ち」と言われているのが『CDTVライブ!ライブ!』。9月1日には3時間SPが放送されますが、その内容に「なぜ1人勝ちできたのか」という理由が表れています。この番組のどんなところが視聴者とアーティストの心をつかみ、他番組とはどんな違いがあるのでしょうか。
なぜ音楽番組は再評価されたのか
まず1年半前に音楽番組の再ブームが起きた理由について。
「音楽番組の最盛期」と言われる1980年代から1990年代は国民的なヒット曲やミリオンセラーなどの誰もが歌える楽曲が続出しました。しかし、アーティストの数が増え、好みの細分化などによってそれらが誕生しづらくなり、さらにネットで音楽を楽しむ人が増えたことで、テレビの音楽番組に対する需要がダウン。「テレビで音楽を聴く時代は終わった」とまで言われていました。
しかし、YouTubeやサブスクで音楽を楽しむ人が増えたことで、逆に一周回ってテレビで放送される音楽番組の価値がアップ。特に「YouTubeやサブスクでは見られない生放送のパフォーマンスを楽しみたい」というニーズが上がっていきました。そこに推し活ブームが加わり、「推しを応援するためにリアルタイムで音楽特番を見る」「SNSに書き込みながらファン同士で楽しむ」という人が増えたことで、業界内では音楽番組を再評価する声が徐々にあがりはじめたのです。
民放各局にとっても視聴率低下に苦しみ、特にスポンサー受けのいい若年層の個人視聴率獲得が課題とされる中、音楽番組は彼らにリアルタイムで見てもらう絶好のコンテンツ。2010年代中盤あたりから年に数回放送される大型音楽特番は一定の支持を得ていましたが、コロナ禍が明けたころにはレギュラー番組を放送したほうがいいだろうというムードに変わっていました。
ライブに徹底してこだわるスタッフ
ではなぜ『CDTVライブ!ライブ!』は民放主要4局がゴールデンタイムでそろい踏みする中、飛び抜けた存在となったのか。
最大の理由はライブにこだわったコンセプトと演出でしょう。フルサイズでの歌唱をベースにしてトークパートなどを作らない、縁のある場所や人気スポットからの生中継、特定アーティストのフェス企画など、制作サイドはこの番組でしか見られないアーティストのパフォーマンスを引き出そうとしてきました。
制作サイドがライブにこだわることによって、視聴者は動画やサブスクなどとは異なる臨場感を楽しめる上に、ライブに参加している感覚を体感できるほか、SNSを使ってファン同士で盛り上がることが可能になりました。「多くの人々が生放送を同時に見て楽しさを共有する」というテレビの原点に返るようなコンセプトと演出が令和の若年層にも響いたのでしょう。
また、ライブにこだわった演出はアーティストとの綿密な打ち合わせが必要なだけに、放送を重ねるごとに制作サイドとの信頼関係が構築されていきました。さらにその信頼関係は「季節ごとに放送される長時間の大型特番につながっていく」という好循環につながっています。