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肉やマーガリンなど「トランス脂肪酸」が老化進めるメカニズム明らかに、細胞の炎症スイッチを押す仕組み、東北大学の研究チームが発表

肉やマーガリン、スナック菓子などに含まれる「トランス脂肪酸」(写真/イメージマート)

肉やマーガリン、スナック菓子などに含まれる「トランス脂肪酸」(写真/イメージマート)

 肉やマーガリン、スナック菓子などに含まれる「トランス脂肪酸」が、体の老化や炎症を進める仕組みを、東北大学の研究チームが突き止めた。

 特に「エライジン酸」という成分が、細胞を老化させ、体の中で炎症を広げる働きを持つことが明らかになった。

 この成果は、美容や健康の大敵である「老化」を理解する上で重要な手がかりとなる。2025年8月、国際科学誌 iScience に掲載された。

見逃せない食と老化のつながり

・トランス脂肪酸:代表成分「エライジン酸」が細胞の老化と炎症を促進することが注目されている。
・健康リスク:炎症の進行は動脈硬化や肝疾患など老化関連の病気につながる。
・食事の影響:日常の食事成分が「老化を早めるスイッチ」になる可能性。

 食品に含まれるトランス脂肪酸は、体の炎症を引き起こして、血管を硬くするなど、老化に関連した病気のリスクを高める可能性が考えられていた。炎症の状態が進むと、細胞の老化が進み、負のスパイラルのように、連鎖的に老化した細胞が増える可能性が指摘されている。

 いわば、日常の食事に含まれる成分が「老化を早めるスイッチ」になる可能性がある。

 研究チームは、よく知られているトランス脂肪酸の一種であるエライジン酸が、細胞の老化と炎症を強める仕組みを調べた。

 カギとなったのは、細胞の表面を覆っている膜にある「脂質ラフト」と呼ばれる小さな足場のような場所だった。これは細胞膜の一部に点在する重要な領域とされる。

 ここにエライジン酸が入り込むことで、炎症のスイッチになる「IL-1受容体」という物質が集まりやすくなっていた。

 その結果、DNAに傷がついて老化した細胞から出る炎症の合図がさらに強まり、老化と炎症の「悪循環」が加速することが分かった。「NF-kB(エヌエフカッパービー)」という遺伝子のスイッチが関連していた。

炎症を断てば「老化の加速」を防げる?

・エライジン酸:マウスにエライジン酸を摂取させると肝臓で老化と炎症が進んだ。
・研究から分かったこと:エライジン酸が老化に関連した病気につながる可能性がある。
・予防の可能性:炎症の流れを断ち切れば、老化や病気の進行を遅らせられる可能性。

 研究チームは、エライジン酸をマウスに摂取させることで、肝臓で細胞の老化と炎症が進み、脂肪肝(MASLD)が悪化することを確認した。

 これは、エライジン酸が老化に関連する病気を進める可能性を示す結果となる。

 一方で逆に考えると、炎症の流れをどこかで断ち切ることができれば、細胞の老化や病気の進行を遅らせられる可能性がある。今回の成果は、食生活と老化の関係を見直すとともに、病気の予防や治療の新しいヒントになる。

 老化と炎症との関連は、かねて注目されている。ヒフコNEWSでも、「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype、老化関連分泌表現型)」という老化を進める仕組みを紹介している。老化と炎症の関連は今後も注目される。

 美容や健康を保つ観点から注目の価値がある研究結果といえそうだ。

参考文献

トランス脂肪酸が老化・炎症を促進する分子メカニズムを発見 -生活習慣病の発症予防・治療戦略の開発に期待-

老化細胞の除去で寿命を延ばす効果、人間ならば130歳相当に、国内外で注目される「SASP」、米国コネチカット大学の研究グループが発表

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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