2005年【岡田第一政権と鉄壁の「JFK」】岡田監督が“勝利の方程式”として抜擢したジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の「JFK」はリーグトップの防御率を誇った(時事通信フォト)
サトテルの“再生”
現役時代の藤川監督を一軍投手コーチとして指導し、盤石の救援陣「JFK」を誕生させた阪神OB・中西清起氏は、藤川監督の起用法に選手たちが応えたことが快進撃につながったと見る。
「春先に色々な若手ピッチャーを試していた。野手も前川右京、中川勇斗、高寺望夢、小幡竜平ら若手を起用しながら、どのあたりが一軍の戦力になるのか厳しく見極めました。レギュラーだけでなく若手選手のコンディションやモチベーションをシーズン通して持続できたことが大きい」
阪神は2023年に岡田前監督のもと日本一に輝いている。この時の主力メンバーの多くが残り、チームの土台となっているが、ただ単に引き継いだわけでもない。阪神のヘッドコーチ経験がある黒田正宏氏が指摘する。
「岡田監督時代は一軍が固定されていて、二軍選手の出る幕がなかった。それを反面教師にした藤川は平田勝男・二軍監督と上手にコミュニケーションを取り、二軍から来た選手は必ずある程度一軍で使ってから二軍に戻して、足りなかった部分を練習させています。
3番手捕手の榮枝裕貴をベンチ入りさせて一軍の勉強をさせているのも岡田監督があまりしなかったやり方です。こうした一軍と二軍の交流がうまくいけば、長い目で見た戦力が底上げされ、常勝軍団になる可能性もある」
そして、岡田監督時代にブレイクしきれず、新体制のもとで覚醒した選手の筆頭がサトテルだ。阪神OBで高知商の先輩でもある江本孟紀氏が言う。
「岡田監督は色々と指導しましたが、球児は三振してもエラーしても責めず、泰然としていたので佐藤は見事に再生した。いちいち失敗を責めないことで、ホームラン王を生んだわけです。石井(大智)を中継ぎに固定したのも大きかった。周囲は衰えが目立つ抑えの岩崎優と代えたほうがいいと言っていたが、球児は使い続け、岩崎の調子が落ちたと見るや入れ替えた。開幕前に球児にインタビューした時はシーズンが始まったらドタバタすると思ったけど、周囲の声にもブレずに戦えています」
今も頻繁に連絡を取り合う正木氏は、最近やり取りした際に藤川監督から「頑張ります。任せておいてください」と言われたという。その真意を恩師はこう読み解く。
「球児が『任せておいてください』と言う時は、実はあまり自信がない時なんです」
負けが込んでも冷静さを保ち、勝ちを重ねて独走態勢を築いても自信過剰には陥らない。そんな藤川監督に正木氏は「この先も球児らしく、後ろを振り向くことなく前に進んでほしいですね」と期待を込めた。
“新人名将”の次の目標は、2年ぶりの日本一だ。
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※週刊ポスト2025年9月19・26日号