江本氏(右)と藤川監督(左、時事通信フォト)は高知商の先輩後輩にあたる
阪神・藤川球児監督の高知商の先輩であり、阪神の先輩でもある江本孟紀氏は、本誌・週刊ポスト(5月23日号)での中畑清氏と達川光男氏との鼎談で「阪神にはぜひ優勝してもらいたいね。藤川には“優勝したら高知商の校庭に銅像を建てやる”と言ってある。その時、横にオレの小さな銅像を建てるんだよ(笑)」と話していた。
就任1年目の藤川監督にはコーチ経験がなく、ヘッドコーチも置かないことを不安視する評論家が多かったが、そんな心配をよそに阪神が史上最速でぶっちぎり優勝した。果たして高知商の校庭に銅像が建つのだろうか。江本氏を直撃すると、「できるだけ銅像の話には触れないようにしているんです」と苦笑い。
そこから話題を変えるかのように藤川監督の手腕について一気にまくし立てた。
「一言で言えば、ジタバタしない監督ですよね。喜怒哀楽を出さないというか、選手に文句も言わないし、やたら褒めたりもしない。岡田(彰布)前監督のいい面と悪い面をうまく学んでいるように見える。反面教師にしている部分もあるし、いい部分は意地を張って拒否することなく引き継いでいて見事です」
巨人は勝手にコケてくれた
そのやり方で生き返ったのが佐藤輝明だと江本氏は言う。エラーをしても三振をしても“ほったらかし”にすることで、ホームランキングに育てたと評価する。
「球児の観察眼は鋭いというか、他球団の監督までよく観察している。阿部巨人でなぜ若手が育たないとかも参考にしていると思いますよ。大きく動かない、大きな博打は打たない、はったりは言わない、と常識的な野球をやっている。それで他球団が勝手にコケてくれるんですからね。巨人なんか岡本(和真)を3番に、岸田(行倫)を4番に置く。勝手にジタバタしてくれるチームと戦っていて球児も楽だったと思いますよ」
優勝の最大の要因として、江本氏は「投打のバランス」を挙げる。
「打順を大きく動かさないのは、前任監督を参考にしている。クリーンナップは3番、4番、5番の誰かが打てばいいというやり方で、“空き地”の6番と7番を競争の場にしてうまく若手を順番に起用した。阿部(慎之助)監督みたいに若手を4番と競わせるのではなく、若手同士で競わせている。
投手陣の厳しさは球児も現役時代に十分経験しているからね。中継ぎは打たれないで後ろに引き継がないといけないし、ストッパーは逃げ切らないといけない。そういう厳しさは選手に伝えているんだと思います。投手陣は中継ぎの軸として石井大智を動かさなかったのが大きい。
それでもやはり野球は先発だと考えている。そこは日本ハムの新庄(剛志)監督と同じしっかりした考えを持っている。7回、8回までできるだけ引っ張って、あとは中継ぎ・抑えに任せる。周りを参考にしながら、こんなことができるんだと感心しています」