那須野容疑者は、Aさんのロッカーのバッグから鍵を盗んで勝手に合鍵を作っていた(写真/イメージマート)
ロッカーのバッグから鍵を盗んで合鍵を作り……
いま46歳となっている那須野容疑者は28歳だった2006年12月28日午前、当時22歳のAさんが住む部屋で、Aさんの首を絞めて死亡させたうえで性的暴行を加えた。ふたりは交際しているわけでもない、ただのアルバイト先の同僚だった。なぜ那須野容疑者がAさんの部屋に入れたかといえば、勝手に合鍵を作っていたからだった。
当時の公判での検察側冒頭陳述によれば、那須野容疑者が居酒屋のアルバイトとして働き始めた1か月後、Aさんもアルバイトとして加わった。すぐに好意を持った那須野容疑者は、メールでAさんを食事に誘い始めたが、Aさんからは断られ続けていた。那須野容疑者はしかし、諦めることなくむしろ一方的に執着を強め、2006年12月初旬には勤務後のAさんを尾行し、家を突き止める。
アルバイト先は一時期、従業員用のロッカーが男女分かれていない状態にあった。これに乗じて那須野は同月19日、Aさんのロッカーを開け、バッグから鍵を盗み、合鍵を作ってすぐにAさんの鍵をバッグに戻した。さらに、その合鍵でAさんの部屋に忍び込んだ那須野容疑者は、交際できる見込みがないと考えたのちに「性的暴行を加えよう」と決意した。那須野容疑者にはかねてより、女性に性的暴行を加えたいとの願望があった。
那須野容疑者が考えた計画はこうだ。合鍵で部屋に侵入し待ち伏せ、帰宅したAさんの首を絞めて気絶させる。その後、ガムテープで目隠しし、両手を緊縛し、肛門にワインを注入しAさんを酩酊させて性的暴行を加える。暴行を加える際には恥ずかしい姿を撮影し「警察に届けたらこの写真をばら撒く」と脅迫する……。
おぞましい計画はしかし、計画通りにはいかなかった。実際、22日未明に実行しようと決意していたが、タイミングを失い取りやめていた。だがそのまま犯行を実行できずに終わったわけではない。よりいっそう危険な行為を実行したのだった。
27日の夜に再度の実行を決意した那須野容疑者は、28日の未明、アルバイトを終え帰宅するAさんを最寄駅で待ち伏せし、自転車で先回りして部屋に入った。顔バレしないよう覆面を装着し、部屋の電球を外した。さらに肛門に注入するためのワインを注射器に入れ、部屋で隠れてAさんを待った。
6時10分に帰宅したAさんがドアの鍵を閉めてチェーンをかけるやいなや、那須野容疑者は背後から首を絞めようとした。これに気づいたAさんが「いやー!」と抵抗したが、同容疑者はAさんの首を絞めながら居間に運び、ガムテープで目隠しをした上で両手を縛ろうとした。すると、首を絞められたことにより意識を失っていたAさんが気がつき、手足をばたつかせた。