藤川監督と阿部監督のどこに差があったのか(写真・時事通信フォト)
就任1年目の藤川球児監督が率いる阪神タイガースが史上最速でリーグ優勝した。貯金33、2位に17ゲーム差をつけての独走だった。優勝が決まった段階では、2位の巨人以下5球団がすべて勝率5割に満たないという異常事態に。このような状況を球界のご意見番で、巨人の名ショートとして第二期黄金時代を築いた広岡達朗氏(93)はどう見ているのか。
「勝率5割を切ったチームにはCS出場権を渡してはいけない。早急にルールの見直しを議論すべきだ。こんな制度を認めているコミッショナーは何もわかっていない」
広岡氏はそう言い切ったうえで、優勝した藤川監督の手腕についてこう評した。
「評論家が揃って“藤川監督が優秀だから優勝した”と持ち上げているが、それだけでは大間違い。“他が弱いから楽に勝てた”と付け加えないといけない。それに阪神のこれまでの監督がダメかと言えば、そんなことはない。もし、優勝インタビューで藤川監督が“我々はいいスカウトを持った。スカウトがいい選手を獲ってくれるから今日がある。金本(知憲)、矢野(燿大)、岡田(彰布)と歴代監督が選手を育ててくれたから、私は楽に勝たせてもらった”と言えば100点だった」
「これでは虎の尻尾も捕まえられない」
広岡氏は「前監督(岡田氏)のもとで勝てるチームでありながら、何らかの事情で退任したことを忘れてはいけない」とも語り、藤川監督がやるべきことは常勝球団に育て上げることだと指摘する。
「今のピッチャーがどんな優秀でも、歳をとったら自然の掟でダメになる。生まれたら死ぬというのが自然の法則。30歳を過ぎれば下り坂になる。どんなに才能があっても自然には勝てない。今年の阪神は才木浩人、村上頌樹、石井大智を中心に、先発や中継ぎを20代の選手で戦って圧勝した。これで藤川監督が何かに気が付いてくれたんじゃないかと期待している」
若い選手が育っていることはスカウトをはじめ編成部門の功績であり、前監督たちの方針が間違っていなかったことを示しているとする広岡氏は、その一方でシーズン終盤でもオーダーが定まっていない巨人について厳しく評する。
「ずっと4番を打ってきた岡本和真に3番を打たせ、岸田行倫を4番に据えた。“岡本を3番に置いたほうが多く打席が回ってくる”などといった素人のような考えでやったことではないと信じたいが、捕手の岸田にはもっとやらせるべきことがある。将来の4番を育てようというのならまだしも、岡本には4番のプライドがあるんです」
200勝を目前に足踏みをしている田中将大にも話は及んだ。
「ヤンキースをクビになり、楽天に復帰。その楽天でも成績が残せなかった36歳の田中将大を2億円も出して獲得して喜んでいるようでは虎の尻尾も掴まえることはできない。
なぜヤンキースが契約をしなかったのか。年寄りに何億も出すより、その資金を若い選手に配っていくほうが楽しみがあるからなんです。希望があるところにお金を使わないと選手が頑張らない。日本はアメリカのそういうところこそ真似をしないといけない」