2022年市長選当選時の田中甲氏
首都圏向けの巨大物流センターが建ち並ぶ千葉県市川市(人口約50万人)の田中甲・市長に驚きの疑惑が浮上した。民主党などで代議士を3期務めた田中氏は、前市長の公私混同市政が批判された2022年市長選で、「税金の使われ方を厳しくチェックする」「情報公開の徹底」を掲げて当選し、“改革派市長”と見られている。
ところが、当選するために公選法違反の“禁じ手”を使い、政治資金の収支報告書も杜撰であった疑いが浮かび上がっている。
前回の市川市長選に出馬したのは、田中氏のほか、前市長、立憲民主党系の女性千葉県議らで、田中陣営は女性県議を最大のライバルと考えていた。そこで田中氏側は、女性候補に投じられる票を分散させるために、「選挙活動をしない名前だけの女性」をもう1人立候補させ、ライバルの女性県議の票を削る戦術を採ったという。前編記事《【ダミー出馬疑惑】田中甲・市川市長、選挙でライバル女性候補潰しのために“ダミー”の対立女性候補を“レンタル”で擁立した疑惑浮上 当の女性は「頼まれて出馬したのか」に「イエス」と回答》では、ダミーとして擁立された女性A子さんを直撃。A子さんは「田中氏の後援会の方に頼まれて出馬したのか」という質問に「イエス」とだけ答えている。
さらに田中市長に対する疑惑はこれだけにとどまらない──。【前後編の後編。前編から読む】
「資金提供は一切ない」
田中市長の政治資金をめぐる別の疑惑もある。
田中氏が代表を務める政治団体「千葉フロンティア」が千葉県選管に提出した政治資金収支報告書(令和3~5年分)には、会計責任者として元秘書B氏の名前があり、添付された「この報告書は、政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません」という宣誓書にもB氏の名前と捺印がある。
ところが、本誌・週刊ポスト記者が四国に住むB氏を訪ねると、当人は「全く知らない」と証言するのだ。
「田中氏が代議士時代に会計責任者をしたことはあるが、落選後に秘書を辞めて引っ越しました。それ以来、20年近く田中氏とは連絡も取っていません。現在は千葉フロンティアとは全く関係ありません。(現在も会計責任者になっていることは)全く知りませんでした」
田中氏は政治団体の政治資金報告書で勝手に元秘書の名義を使い、宣誓書まで提出していた、ということになる。
政治資金を監視している上脇博之・神戸学院大学教授が言う。
「政治団体の政治資金収支報告書に会計責任者の名前を勝手に載せたのだとすれば、これは政治資金規正法違反(虚偽記載)や有印私文書偽造・同行使の罪に抵触する可能性がある」
これだけの法律違反の可能性を指摘されていることに対し、当の田中市長はどう答えるのか。直撃した。
「(女性候補に出馬の依頼や資金提供をしたことは)私からは一切ない」