「重箱の隅をつつく男」への反撥
さて、閔元植という人物をご存じだろうか? 李完用などにくらべれば一世代下の人物だが、この名を見れば現代の韓国人はただちに「李完用と同じ売国奴だ!」と叫ぶだろう。それでおわかりかと思うが(笑)、実際は売国奴どころか朝鮮民族の進歩に大きく貢献した人物である。その功績については後で触れるとして、彼はこの「三・一独立運動」についても批判的だった。
じつは、この「運動」については住民の抗議活動と日本官憲の弾圧ばかりが大きく取り上げられるが、全国的に見れば放火、殺人、略奪が頻発した。現代の欧米あたりでもデモの目的はまともだとしても、それに便乗して商店を略奪したり放火したりする暴徒が出現する。民主主義社会の現代ですら起こる現象なのだが、ましてやこの時代の朝鮮半島は前近代の体制からまだ抜けきっていない。
あの尼港事件でソビエト側に加わった朝鮮人が、市民に対しどのような前近代的略奪、暴行を行なったかについては以前詳しく述べたところだが、いわば「本土」についても事情は同じだった。
だから、閔元植は「三・一独立運動」を「朝鮮騒擾」と呼び、尼港事件の起こる少し前に発行された日本の有力誌『太陽』一九二〇年(大正9)の新年号に、「朝鮮騒擾善後策―鮮民の求むる所は斯くの如し」という論評を寄稿した。
〈このたびの三・一運動の近因は、米国大統領ウィルソンの提唱した民族自決主義を、欧州戦争と何ら関係のない朝鮮にも適用されるものとする誤解から起った。もしくは誤解を装うて、ひょっとしたらうまくゆくかも知れないと狙った在外朝鮮人の扇動に由来した。もっと言えば、初めから実現できないと知りつつ妄動を企てた感がある。常識的に見れば、狂気の沙汰と言えよう。しかし朝鮮人が、日本の統治政策に深い不満を抱いていることは確かである。この対策を考えねばならない。〉
(『祖国の英雄を「売国奴」と断罪する哀れな韓国人』金文学著 ビジネス社刊)
これまで何度も述べてきたように、この時点で日本の統治はまだ九年経ったばかりであり、朝鮮半島および人民の近代化は端緒についたばかり。この時点で独立などを唱えるのは、やはり西洋近代化を否定する勢力と、とにかく日本が朝鮮民族の上に立つことが許せないという反撥に縛られている勢力である。なぜ彼らは西洋近代化を否定し、日本に反撥するのか?
おわかりだろう。朱子学である。この世界では中華文明以外は文明では無いし、その朱子学体制の頂点に立つ中国人に次ぐ朝鮮人が、科挙すら実施できなかった「野蛮」な日本人に「指導」されること自体が許せない、ということだ。
繰り返すが、これが朱子学体制というものである。そしてお気づきのように、これが続く限り朝鮮半島は絶対に近代化できない。韓国人はいまでも「日本が介入しなかったら韓国は独力で民主化、近代化できた」と言っているが、これがまったく自分の国の歴史あるいは民族性を理解しない、まさに妄言に過ぎないことを、韓国人は理解していない。