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【長野立てこもり殺人事件判決】「倒れている被害者を目立たなくしようと台車で自宅敷地の奥に運び込んでいた」 死刑を言い渡された犯人が「完全責任能力」を認められた理由

卒業アルバムにうつった青木政憲被告

卒業アルバムにうつった青木政憲被告

 一昨年5月に長野県中野市で、散歩中の女性2人と警察官2人を殺害したとして殺人と銃刀法違反に問われた青木政憲被告(34)の裁判員裁判判決が10月14日に長野地裁で開かれ、坂田正史裁判長は青木被告に求刑通りの死刑を言い渡した。

 周囲から「ぼっち」「キモい」と言われているという“妄想”を持っていた青木被告。裁判の争点は責任能力だった。検察側は被告が当時、妄想症であったが完全責任能力を有していたと主張しており、対する弁護側は、統合失調症の影響下で起こした事件であるとして心神耗弱の状態にあったと主張していた。判決では検察側の主張が認められた格好になる。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
 青木被告には、周囲から「ぼっち」「キモい」と言われている、という妄想があったということは、裁判では前提となっていた。争点は、犯行当時に完全責任能力があったかどうかである。

 検察官は被告が犯行当時、妄想症であったが、完全責任能力を有していたと主張しており、この立証のために精神鑑定が行なわれた(検察側鑑定)。対する弁護人は、被告が当時、統合失調症であり、心神耗弱状態にあったため責任能力は限定されると主張していた。この立証のため、検察側とは別の医師が鑑定を行なっている(弁護側鑑定)。判決では事実関係に照らしながら、双方の鑑定結果を検討し、検察側鑑定が信頼できると結論づけた。そのうえで被告が犯行当時、統合失調症ではなく妄想症であったと認めている。

「国際的に広く承認されている診断基準に依拠しつつ、本件の経緯、状況、被告人の経歴、生活状況などに関する資料、30時間近くにわたる被告人との面談や検査の結果等をもとにした確かな事実関係を前提に、被告人の精神障害の症状が犯行に与えた影響について論理的かつ明瞭に判断を示しているものであり、全体を通じ、相当な根拠に裏打ちされた堅実な考察となっていると認められ、もとより検討過程に飛躍や唐突さは見受けられない」(判決より)

 判決ではこのように検察側鑑定の信頼性を高く評価しているいっぽうで、弁護側鑑定については、次のように述べている。

「証拠や事実関係等の根拠に十分基づいておらず、あるいは根拠の有無を検証しようがないために結局は推論の域を出ないものとなっていると言わざるを得ない」

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