逮捕後、移送される青木被告(時事通信フォト)
私服警察官は攻撃しなかった
加えて、弁護側鑑定を担当した医師による被告への面談時間が、トータル2時間程度であることも、検察側鑑定の30時間と比して短いと評価されたようだ。さらに弁護側鑑定医師が、被告の母親をもともと診察していた間柄にあったことも、信頼性に影響したようである。判決はこう続く。
「(弁護側鑑定)医師は母の診察医であって、診察時には父が必ず同席しているといい、そうである以上、その子である被告人の精神鑑定を行なうにあたっては、鑑定医としての中立性をいかに確保するかが課題となっていたと考えられるが、特に配慮がなされた形跡はない(中略)こうしてみると、同医師が本件の精神鑑定にあたる医師として適切であったかどうかも疑問なしとしない」
こうして検察側鑑定を信頼できると結論づけた裁判所は、青木被告に完全責任能力があったと認定した。その理由のひとつとして、被告が状況に応じた行動を取っていることを挙げている。
「前後には攻撃に用いる凶器を取りに自宅に戻り、あるいは倒れている被害者を目立たなくしようと台車で自宅敷地の奥に運び込むなど、時々の状況に応じ、自身の感情や思惑に従って行動していることが明らかであり、悪口を言われたという点が妄想であることを除いては、事態の変化にそぐわない奇異な言動は見られない」(判決より)
さらに、散歩中の二人を殺害したのち、これを目撃していた近隣住民から「何でこんなひどいことをするんだ」と問われた際に「殺したいから殺した」と答えたことや、警察官らを殺害したのちに臨場した私服警察官に対しては攻撃しなかったことなどに触れ「被告人が自身の行動の内容、意味を理解していたことも、自身の考えで行動を選択していたことも間違いないといえる」と述べている。