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【新刊】元NHK・住吉美紀アナが振り返る“独立後の挫折”や“元カレ残虐譚”…『50歳の棚卸し』など4冊

とことん相手を問い詰めない。ためらいが関係を温める夕暮れ時の恋

 読書に最適なこの季節には、いろいろな種類の本を読んでみてはいかがでしょうか? この秋におすすめする4冊の新刊を紹介します。

『情熱』桜木紫乃/集英社/1815円

 読みながら、物事に白黒つけてもしょうがないと思うようになった年代っていいなと思う。カメラマンとスタイリストとして40年ぶりに再会する50代の男女、ボケたら同居解消と美容師の女に言われている74歳の気のいいホスト、左遷のショックを知人の弁護士にぶちまける裁判所勤務の50歳の女性。ここから何かが始まる。薄暮を淡い紅に染める夕陽の輝きを思わせる計6編。

どうにもならないことを乗り越え、今ある、この向日性の日々

『50歳の棚卸し』住吉美紀/講談社。/1650円

 素朴な感想から始めること、お許しあれ。「住吉さんってこんなにオープンマインドの方だったの!?」という感嘆の驚きだ。海外育ち、NHK独立後の挫折、結婚を望んで痛い目に遭った元カレ残虐譚、夫との出会い、丸4年頑張った不妊治療、そして子を持たない人生の受容はラジオ生ワイド番組のパーソナリティの質も上げる。あらゆるものが気持ちよく吹っ切れた今に乾杯だ。

他人の手帳は現代の万葉集。生の言葉が同時代を生きる人々の心音を伝える

『他人の手帳は「密」の味 禁断の読書論』志良堂正史/小学館新書/1100円

 著者のユニークな活動はテレビなどでも紹介済み。生の言葉の断片に触れたくて手帳収集を始め、「手帳類図書室」(渋谷区代々木)を開設する。他人の手帳の面白さは書き手と書かれたものが切り離されていること。「揮発性の高い私的さ」とは言い得て妙。ギャンブラーの10年日記、17年に及ぶ恋愛の記録など手書き文字がまたいい。手書きの文化をなくしてはならないと強く思う。

大人気の伊良部シリーズ第4弾。不敵な美人看護師マユミとのコンビも健在

『コメンテーター』奥田英朗/文春文庫/737円

 手違いで出演させた伊良部のおかげで番組が持ち直した視聴率依存症のTVディレクター、怒りを発散できなくて過呼吸発作やパニック障害に陥る症状が、伊良部の凶暴な行動療法で治るサラリーマン、伊良部の甘言に乗せられ“散財”することで現実世界に引き戻される若き億万長者のデイトレーダーなど5編。今回は伊良部のおふざけが、人情噺に昇華するしっとりした作も。

文/温水ゆかり

※女性セブン2025年10月30日号

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