米国によってニコラス・マドゥロ大統領が拘束された(時事通信フォト、AFP=時事)
「マドゥロは操り人形にすぎない。大統領の拘束はいいニュースですが、すぐにベネズエラが良くなるとは思えない」──そう語るのは、前編で“ベネズエラ国民の本音”を明かした20代のベネズエラ人男性だ。
1月3日、アメリカのトランプ大統領の指示で、米軍の特殊部隊などが中南米のベネズエラを急襲。マドゥロ大統領を拘束してアメリカに移送し、5日には裁判が行われた。
「2020年、マドゥロ大統領をアメリカは起訴していました。ベネズエラ国内の麻薬組織と結託して、アメリカ内でコカインを流通させた罪などに問われています。起訴状によると、前政権から25年以上、国ぐるみでアメリカのコカイン流通に関与していたといいます。マドゥロ大統領は起訴された全ての罪状を否認していますが、トランプ大統領は決定的な証拠があると声明を出しています」(大手紙国際部記者)
マドゥロ大統領は2013年、反米路線をとった前任のチャベス大統領が死去後の選挙に当選。「その後、強権的な体制になっていった」(同前)という。
「マドゥロ大統領は元バス運転手です。組合運動をきっかけに政界入りし、チャベス前大統領の側近として頭角を表しました。大統領としてのマドゥロ氏は独裁者というよりは、同じような考え方の一握りの人間だけで国家運営してきたというイメージでしょうか。カリスマ性があった前大統領と違い支持率は低く、権力維持のために強硬な手段をとってきた」
「特に悪名高い」というのが、FAESという特殊部隊だという。国家警察のエリート特殊部隊で、治安維持を名目に、国民に対する超法規的殺害が許されている。
「『死の部隊』『ベネズエラのゲシュタポ』とも言われています。国連人権高等弁務官報告によると、2018年ごろのベネズエラではおよそ1年半で6800人が殺害され、その多くがFAESによるものだといいます。
殺害を正当化するために、殺害した市民に銃を持たせるなど現場の証拠改竄などがされたケースも報告されています。国が関与しづらいケースにはコレクティーボという民兵組織を使っていることもあると主張する野党や人権活動家もいます。徹底した恐怖政治が敷かれている」(同前)
冒頭のベネズエラ人男性は「大統領拘束を歓迎している」と言いつつ、現地の温度感をこうも語る。
「本当に悪い人間はまだ残っているんです。彼らがまだ政権中枢にいる現状を見ると、暗い気持ちになってしまいます。
徐々に報道され始めているようですが、黒幕はディオスダド・カベジョ内務大臣と、ロドリゲス兄妹……今回暫定大統領となったデルシー・ロドリゲスと、その兄で国民議会議長のホルヘ・ロドリゲスです。
