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《狙われる障がい児》「すたっふまたさわました」「ながいものだしました」喋れない10代の少女が必死に訴えた性被害が認められた“稀有なケース”

自ら話ができない障害者を狙う悪質なケースもある(イメージマート)

自ら話ができない障害者を狙う悪質なケースもある(イメージマート)

 厚生労働省の2023年の調査によると、虐待を受けた障がい者の被害は818件認められており、そのうち15名が性的虐待を受けていたことがわかった。さらに障害者の場合、自らが訴えを起こすのが困難かつ立件が難しい点が問題視されており、とりわけ子どもを狙う悪質な性暴力は深刻さを増している。

 朝日新聞取材班『ルポ 子どもへの性暴力』(朝日新聞出版)より、障害を持った子どもの被害実態をお届けする(一部抜粋して再構成)。【全3回中の第2回。第1回から読む】

※この記事では性暴力被害の実態を伝えるため、被害の詳細について触れています。

* * *
 高松市に住む聖子さん(仮名、51歳)は2018年、ショートステイから帰った長女(当時10代)が帰宅直後にパンツを脱ごうとしたことに驚いた。変だと思って聞くと、「すたっふまたさわました」と告げられた。長女は重度の知的障害があり、言葉を話せない。ただ、ひらがなを理解することはできた。キーボードに文字を入れると音声が流れるアプリで会話をしていた。

 長女はアプリを通じて、何度も訴えた。「またなかさわってしました」「またなかいたい」。職員に性器を触られ、中に指を入れられたようだった。「ながいものだしました」と、職員が性器を露出したと思われる内容も、複数回訴えた。

 聖子さんが香川県警に相談すると、準強制わいせつ(現・不同意わいせつ)容疑で当時20代の男性職員が逮捕された。職員は調べに対し「話をできないからバレないと思った。そういう子を狙った」という趣旨の話をした。その後起訴され、懲役2年執行猶予4年の有罪判決を受けた。

 事件当時、職員は男性利用者の介助をしていた。だが、パーティションで区切っただけで、同室に長女もいた。介助していた女性職員が席を離れた隙に、長女の体を触っていた。施設側は「同性介助の徹底が図られていなかった」と課題を認める。

 事件から2年後、聖子さんは施設に対して民事訴訟を起こした。すると、以前は経過報告のみだったのに施設から市に対して事故報告書が提出された。提出を求めた市側は「訴訟とは関係ない。一定の改善が見られたときに提出してもらった」と説明するが、聖子さんはその対応に不信感を抱いた。

「アプリを使って話すことを覚えていなかったら、気づけずにその後も施設を使い続けていた。長女が行動で被害を訴えたとしても、問題児扱いされていたかもしれない」

 ただ、こうした例はまれだ。弁護士の杉浦ひとみさんは「被害者に知的障害がある場合、そうでない人に比べて性暴力について刑事事件での起訴は難しいのが実情。子どもであればなおさらだ」と話す。知的障害のある子どもは被害に遭いやすい上、被害であることを気づきにくい。さらに「嫌だ」「おかしい」と感じたとしてもどう訴えていいかわからず、勇気を持って訴えたとしても受け止めてもらえず、そのまま放置されることが多い、と指摘する。

「障害のある子どもの性暴力は、周りの大人がすくい上げて初めて認識される」

 性暴力は密室で起こることが多いため、証拠が少ない。有罪の立証には被害者の証言が極めて重要になるが、知的障害のある子どもの場合、裁判での反対尋問にかく乱され、一貫した主張をすることが難しいと判断して検察が不起訴にするケースが多い。

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