全国各地で相次ぐ、市街地でのクマ被害
「怪我をした直後は気が動転していたこともあって忘れていたことも多いのですが、改めて当時のことを振り返ると、忘れていたことをだんだんと思い出してきました。
当日の朝、自宅前のバス停で女子高生が熊に襲われニュースになっていたんです。警戒していましたが、まさか自宅の車庫に熊が隠れているとは考えてもいませんでした。シャッターを開けると目の前に熊がいて、一瞬目が合い、にらみ合うような状況になりました。時間にしたら2~3秒だと思いますが、今思い出してもぞっとします。実際に目の前に立たれると大きくて、恐ろしい。自分の無力感を感じました」
数秒のにらみ合いの後、襲われると思い後方に走り出したという湊屋さん。クマに襲い掛かられたのは、その直後だった。
「7~8メートルほど走って逃げたと記憶しています。そうしたらすぐに熊が物凄いスピードで追いかけてきて、自分を追い抜いていきました。そして左斜め前方から襲いかかってきたんです。当時は恐怖で記憶が曖昧なのですが、退院後に自宅の敷地を確認したら、自分が逃げた脇の木や草むらが全部倒れて、クマがどのように移動したのかがわかった。
クマは後ろから自分を襲ったのではなく、一度自分を追い抜いてから襲ったんです。倒され、右半身を下にして横向きになった状態で、噛まれているのか、爪で引っ掻かれているのか分かりませんが、頭を中心に攻撃されました。本能的に頭を抱えて、なんとかその場をやり過ごすために防御しました。時間にしたら2~3分くらいかもしれませんが、とても長く感じました。そして一瞬隙があったので、力をふり絞り自宅の中に逃げ込んだんです」
命からがら自宅に逃げ込んだ湊屋さんが自宅の鏡を見ると、頭の肉が裂け、頭蓋骨が見えていたという。救急車を呼んだが、重傷ゆえドクターヘリで秋田市内の病院に搬送された。
