現在は母の鹿沼絵里さんと2人暮らし
線香をあげにきた佐藤浩市からの「言葉」
こんなふうに、父が亡くなった後も俳優を続けていましたが、今はコンビニでアルバイトをしながら、年1回、朗読会『あの日の…忘れえぬ言葉たち・手紙』の舞台に立ち、靖國神社刊行の『英霊の言乃葉』という、第二次世界大戦で国のために亡くなった方々の遺書を朗読しています。これは母が企画した朗読会で、2019年にスタート。終戦80年の今年は6回目。毎年、心を込めて朗読させてもらっています。
毎年開催している朗読会の様子
本当は、もっと俳優の仕事をしたい。
父の葬儀の翌日、葬儀に出席できなかった佐藤浩市さん(64)が、自宅へ線香を上げにきてくれました。
そのとき、「お父さんのようになりたいなら10年はがんばりなさい。そして、俺とやれるところまで来い。待ってるよ」と、声を掛けてくれました。だけど、俳優という仕事は、自分がやりたければできる、というものではありません。チャンスをいただけたときに備え、日々を自然体で過ごすことが大切だと思い心がけています。
妹は結婚し家を出ているので、今、僕は母と2人暮らし。結婚したい気持ちはあるし、妹の子どもたちがかわいくてしかたがないけれど、母に孫の顔を見せてあげる役目は妹が果たしてくれたかな、と(笑)。
そして、父がもし生きていたら、どんなふうに孫と接したかな、と想像したりしています。野球好きの父だったので、大谷翔平選手が活躍したWBCも喜んで観たかな、とか、そのときどきに、父のことをよく考えています。
ここ10年ほどは母が大病で倒れ、何度も入退院を繰り返したので、僕は母の看病で必死でした。そんなこともあって、僕の俳優の仕事も思い通りにはいきませんでした。でも、母には小さい頃から守られてばかりでしたから、僕は感謝しかありません。できる限りのことをしてあげたい、と思っています。
(了。前編から読む)
《出演情報》
朗読会『あの日の…忘れえぬ言葉たち・手紙』
11月8日(土)13時開演
場所:靖國神社 能楽堂
出演:古尾谷雅人(古尾谷雅)、林健樹、卯木浩二、深津哲也、植村喜八郎、横田衛、竹原郁雄、倉知成満、(司会)田中由美子
企画:古尾谷登志江(鹿沼絵里)
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/岩松喜平
朗読会『あの日の…忘れえぬ言葉たち・手紙』
朗読会『あの日の…忘れえぬ言葉たち・手紙』



