新関脇・安青錦にインタビュー
11月9日に初日を迎える九州場所に、ウクライナ出身の安青錦(21)が新関脇として挑む。祖国を襲った戦火を逃れて3年半。異例のスピードで番付を駆け上がり、大関、そして横綱を目指す安青錦がその決意を語った。【前後編の前編】
「次に目指すのは大関」
「関脇昇進は素直に嬉しい。強い人しか上がれないところだから。でも満足するところではないし、特に意識はしていないです。自分はいつも通りの相撲を取り、1日一番を勝つだけ。それだけのことです」
そう語るのは、初土俵から史上最速となる13場所で関脇昇進を果たした安青錦だ。ウクライナ西部のヴィンニツャ出身で、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、同年4月に祖国を離れ来日した。8月には安治川部屋に入門し角界入り。2023年9月場所で初土俵を踏むと、所要7場所で十両に昇進。十両を2場所で通過すると、新入幕となった今年の3月場所で11勝をあげ、以来、4場所連続で11勝を記録した。
九州場所は新関脇として迎える。大関昇進は三役での3場所33勝以上が目安だが、安青錦は先場所が新小結。大関昇進にはもう1場所が必要になるはずだが、過去には照ノ富士や栃ノ心など“3場所前が平幕”で大関昇進となったケースもある。
そもそも33勝に到達せずに大関昇進となったケース(朝乃山、正代、稀勢の里、豪栄道など)もあるうえに、現在は琴櫻が“ひとり大関”で、安青錦の大関昇進に追い風となる。そうしたなかで「大関」という地位を安青錦はどう捉えているのか。
「誰でも上がれるところじゃないし、みんなが憧れるところですからね。三役に上がったので、次に目指すのは大関。大関を目標に稽古してきた。まだ自分自身で満足していないので、力士になったからにはさらにその上(横綱)も目指したい」
戦前の照國(元横綱)以来2人目となる新入幕から4場所連続で11勝をあげていることにも、満足はしていない。
「(九州場所は)11勝より勝てるように頑張りたい。というか、いつも15勝を目指してやっている。それを目指してやらないとやっている意味がないでしょう。(関脇は)目指しているところじゃないので、これからという気持ちのほうが強いです」
目標は全勝優勝―幕内に上がってからは、敢闘賞や技能賞など4場所連続での三賞受賞も果たしているが、浮ついた様子はまるでない。
「新入幕の時にもらった敢闘賞は自分の相撲に自信が持てるようになったということで嬉しかった。ですが、今はそれ以上のもの(優勝)を狙っているので(三賞では)満足はしていない。土俵に上がる時は勝つことしか意識していません。全部勝てば優勝できる」
