兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
政治家でYouTuberでもある立花孝志容疑者が逮捕された。この数年、選挙のたびに話題をふりまき、公職選挙法のあり方が問われる事態をたびたび引き起こしてきた。政治家としてのスタート前から知るライターの小川裕夫氏が、立花容疑者が「変な人」から「選挙ハック」の達人となり、現在に至るまでを振り返る。
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2025年11月9日、兵庫県警察は元参議院議員の立花孝志容疑者を名誉毀損で逮捕した。罪状は元兵庫県議への名誉毀損で、2024年の兵庫県知事選と大きく関わった末に発生した事案だ。
さかのぼると、立花氏は”NHKをぶっ壊す”をスローガンに2019年の参議院議員選挙に出馬し当選した。同選挙では得票率が2パーセントを超えたことから、立花氏が立ち上げたNHKから国民を守る党は政党助成法が規定する政党要件を満たしている。
国政政党の党首になった立花氏だったが、約3か月で参議院議員を辞任。その後は各地の選挙に立候補することを繰り返していた。なかでも直近で注目されたのは、2024年の兵庫県知事選挙だろう。
議会で不信任案が可決されたことに伴って県知事を失職した斎藤元彦氏の出直し選挙に、立花氏も立候補した。通常なら、知事の座を争う対立候補となるが、彼には自身が当選する気はなかった。街頭演説では「斎藤氏に票を入れるよう」に呼びかけている。つまり、立花氏の立候補は斎藤氏を後方支援する目的があり、これが二馬力選挙と問題視された。このときは斎藤知事を応援するため、パワハラ疑惑などを追及していた百条委員会のメンバーについて虚偽の内容を繰り返し発言、発信していた。
街頭演説やSNSで立て板に水の弁舌をふるい注目を集めてきた立花氏は、政治家としてどのような道をたどってきたのか。
「今度の会見に、変わった人が来るらしい」
筆者は霞が関・永田町の取材を始めてから約20年の経験を有するが、初めて立花氏を目にしたのは参議院議員に初当選する以前の、2011年11月の自由報道協会での記者会見だった。
自由報道協会はフリーランスの記者・カメラマン・編集者などによって立ち上げられた組織で、「誰でも参加できる記者会見の開催」を目的にしていた。その立ち上げメンバーにはジャーナリストの上杉隆氏や後に著書『黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した畠山理仁氏などがいて、筆者もその末席に名を連ねた。
