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高田文夫氏による、さまぁ~ず三村の人物評 “かよつっこみ”は向島の芸者衆からも圧倒的な支持、「いたずら心いっぱいの下町の小僧」の魅力

三村マサカズが何だかおかしくて仕方がない(イラスト/佐野文二郎)

三村マサカズが何だかおかしくて仕方がない(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、墨田区育ちのさまぁ~ず三村マサカズについて。

 * * *
 ここ10年以上、テレビの中で安定の面白さをみせているのがさまぁ~ず。大竹もいいが私は三村が何だかおかしくて仕方がない。いかにも東京の下町の小僧。かもし出す空気、匂い立ち居振る舞いいたずら心いっぱいの言葉。どうみても墨田区の人間だ。

 若き日大いに語ってくれてびっくりしたたけしの足立区の話と並ぶ墨田の凄さ。同じ東京生まれとはいえ私は渋谷で生まれ世田谷で育った。足立区、墨田区とは違う国のようでドキドキしてワクワクもしてしまう。スカイツリーの下あたりの話だ。

 伝説の噺家・古今亭志ん生の住んだ「なめくじ長屋」があったあたり。いかりや長介もこの辺の生まれときいて嬉しくなったのを覚えている。春頃、向島のお座敷へ連れられて行ったのだが、そこの芸者衆にきいてみた。「この辺から出た有名人って誰」「古くは滝田ゆう、圓歌、小川宏かしら」「もう誰も分からないわよ」「そうね、近い所で木の実ナナか……」。とそこへ一番の古株の婆ちゃん芸者首をつっこみ、「一番肝心なのを忘れちゃいませんか。なんたって三村よ。三村!」。一同「三村かよ」。“かよつっこみ”はまだ健在だった。地元じゃ大変な支持。

 若き日“バカルディ”といって少し売れた。三村曰く「あの頃どんな番組行っても高田センセーに審査されてたなぁ」。その後ピタッと音を立てて5年程消えた。しかしそのおかしみの実力は高校時代からの仲良しのふたりによってブランクも軽々クリア。いつしか名前も“さまぁ~ず”という超ダサイ名前に変り大当たり。

 何がおかしいって若き日三村の実家をロケする番組があって小さな2階建てにおじさん、おばさんまで住んで10人家族。どう見ても家がかたむいている。コーラのビンなど置くとゴロゴロ。しまいにはおじさんが座布団に正座したらゴロンゴロンでんぐり返しして3回転。「あの家どうした」と先日きいたら「ありますよ。まだナナメっちゃってるの。まだ転がってる」。アハハおかしい。私はこういう東京の人間が理屈抜きに好きだ。

 東京の芸人から田舎者の山形芸人。2日前テレビつけていたらコンプラの時代にとんでもない発言が次々。「あの頃は芸人ほとんどヒロポンやったから」だの「漫才で天下とった時、上野でキャバレーやってすごい借金。毎日ヤクザの取り立て」「死にそうな大病してさ」。BS12、見るとビートきよしが鶴瓶、阿川佐和子相手に1時間しゃべってる。この時代に大丈夫かと見てるこっちがハラハラ。「世界の北野になった相方とオレみたいにチンタラ生きてんの、どっちが幸せなのかねぇ」だと。

※週刊ポスト2025年11月21日号

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