ビジネス

《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い

カクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている

カクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている

 グラスにそそがれたのは、琥珀色の輝きを放つカクテル。バーテンダーが美しい所作で、1杯1杯を手際よく仕上げていく。作品名は『鳳鳴(ほうめい)』。「鳳凰は古来より平和と繁栄の象徴であり、その声は吉報を告げるとされています。咲き誇る桜が春の訪れを告げるとき、“鳳凰”が希望の報せを“鳴”り響かせながら舞い降りる」、そう願いが込められたカクテルが完成すると、会場からは静かな歓声があがった──。

 このたび、バーテンダーNo.1を決めるサントリー株式会社(以下、サントリー)主催の大会『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』ファイナルが開催された。

「あなたが世界に伝えたい日本発のカクテル」との親和性の観点から選定された課題製品。左から、サントリージャパニーズクラフトジン「ROKU〈六〉」・サントリージャパニーズクラフトウオツカ「HAKU〈白〉」・サントリーリキュール「KANÁDE〈奏〉」全種。このほかSUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」がある

「あなたが世界に伝えたい日本発のカクテル」との親和性の観点から選定された課題製品。左から、サントリージャパニーズクラフトジン「ROKU〈六〉」・サントリージャパニーズクラフトウオツカ「HAKU〈白〉」・サントリーリキュール「KANÁDE〈奏〉」全種。このほかSUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」がある

長い歴史を持つ大会が進化

 本大会は、『サントリー ザ・カクテルアワード』として1994年から日本を代表するカクテルのコンペティションを実施し、昨年で第30回の節目を迎えた。

 今年は日本のバー業界活性化を目指し、コンセプトを刷新。カクテルと、それを生み出すバーテンダーの魅力に焦点を当てた。肩書き・経歴・年齢にとらわれず、全てのバーテンダーの感性と創造性に光をあてる舞台『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』として生まれ変わった。

 今回の課題カクテルは「あなたが世界に伝えたい日本発のカクテル」。これまで国内を中心に洋酒文化の創造と発展に取り込んできたサントリーとして、今後は世界に誇れる日本の洋酒文化を、国内だけでなく世界にもより積極的に発信していきたいという思いが込められているという。

 そして、この日、その記念すべき第1回大会の優勝者が決まった。

創作カクテル審査のファイナリストに選ばれた8名のバーテンダーら(左上から時計回りに古瀬則彦さん、浅野陽亮さん、山下和輝さん、小坂駿さん、常岡大祐さん、若林将太さん、島直右さん、土田勇人さん)

創作カクテル審査のファイナリストに選ばれた8名のバーテンダーら(左上から時計回りに古瀬則彦さん、浅野陽亮さん、山下和輝さん、小坂駿さん、常岡大祐さん、若林将太さん、島直右さん、土田勇人さん)

 全国各地から名乗りをあげたバーテンダーは総勢約500名。この数字は、前年度『サントリー ザ・カクテルアワード2024』 の応募数の約1.4倍にものぼる。厳正な審査を経て、一次選考とセミファイナルを通過した8名のファイナリストが、ステージ上に設置されたバーカウンターを舞台に、 “バーテンダーNo.1”の称号をめぐる白熱の戦いを繰り広げた。

 審査は、1stステージと2ndステージの2段階で行われた。審査員は、前年度の優勝者や海外を拠点とするバーのオーナーなど、国内外のカクテルシーンに精通する面々が集った。

 1stステージ『創作カクテル審査』では、ファイナリストが個性豊かな創作カクテルを振る舞った。テーマである「あなたが世界に伝えたい日本発のカクテル」との親和性の観点から選定された課題製品は以下4品。その中から少なくとも1品以上使うことが条件となっている。

・サントリージャパニーズクラフトジン「ROKU〈六〉」
・サントリージャパニーズクラフトウオツカ「HAKU〈白〉」
・サントリーリキュール「KANÁDE〈奏〉」全種
・SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」

 日本の四季が生んだ6種の和素材を使用したサントリージャパニーズクラフトジン「ROKU〈六〉」をはじめ、サントリーが誇る人気製品だ。ファイナリストたちは日々の仕事を通して磨き上げた感性でカクテルづくりに向き合っていく。「四季の移ろい」「徳の心」「静寂の情景」など──小さなカクテルグラスの中で“日本の情緒”を描き出した1杯を、審査員は真剣な面持ちで口に運んでいた。

 また、ファイナリストに求められるのはカクテルのおいしさや、テーマとカクテルの整合性など、“カクテルメイクの技術”だけではない。プレゼンテーション力やホスピタリティなど、“おもてなしの心”も審査基準だ。完成したカクテルの味わいや使用したブランドの魅力をお客様に正しく伝えられるか、そしてお客様にとって心地の良い体験を提供できるか。それらの総合評価によって、上位3名が2ndステージへ進んだ。

 2ndステージは、サントリーの創業者・鳥井信治郎氏の口癖であり、サントリーの創業精神ともいえる「やってみなはれ」を冠した『Yatte Minahare審査』。

2ndステージ『Yatte Minahare審査』ではファイナリスト3名がお題に応じてカクテルの自由創作を行った

2ndステージ『Yatte Minahare審査』ではファイナリスト3名がお題に応じてカクテルの自由創作を行った

 お客様役を相手に、即興でカクテルを創作。ファイナリストたちには、どんなお客様が登場するか、そしてどのような思いを抱えているのかはいっさい知らされない。実際の接客と同様にお客様の嗜好や気持ちを引き出し、1杯のカクテルとして形にする“技”と“心”が問われる審査となった。

「人生を変える1杯」をつくりたくて

 約4時間にわたる戦いを制し、『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』の初代優勝者に選ばれたのは、神奈川県「N-BAR」のバーテンダー・若林将太さん(32)。『鳳鳴』と名付けられたカクテルは、SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」をベースに、日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANÁDE〈奏〉桜」を重ね、フレッシュレモンジュースや自家製のワールドブレンデッドティーソーダを加えた、複層的で奥行きのある味わい深いカクテルだ。

「碧Ao」は、同社の蒸溜所でつくられた「世界5大ウイスキー」の原酒を1つにブレンドした世界初のウイスキー。アイリッシュ、スコッチ、アメリカン、カナディアン、そしてジャパニーズ……個性豊かな5大ウイスキーが見事な調和を奏でる“世界をつなぐウイスキー”だ。若林さんは同製品に桜や茶葉といった日本のイメージを加えることで、日本から世界へ発信する1杯を表現した。

「1st Stage審査と2nd Stage審査の合計で優勝者を決定するファイナルにおいて、若林さんは1st Stage審査で群を抜いており見事優勝されました」と、サントリー株式会社 執行役員 スピリッツ本部長の塚原大輔氏が振り返る。

 優勝決定後、若林さんは涙ぐみながら次のように語った。

『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』の初代優勝者に選ばれた神奈川県「N-BAR」のバーテンダー・若林さん

『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』の初代優勝者に選ばれた神奈川県「N-BAR」のバーテンダー・若林さん

「何度挑戦しても結果が出ない期間が5年ほど続き、しばらくコンペティションへの出場をお休みしていました。そんななか、本大会の開催に寄せられたメッセージに『あなたの一杯には、誰かの人生を変える力がきっとある』という言葉を見つけ、私もそんな1杯をつくり上げたいという思いで出場を決意。

 何よりも楽しむことを第一に臨ませていただきました。今後も、より多くのお客様に居心地の良い空間を提供していきたいと考えています」

 若林さんには、同社から優勝賞金50万円と、海外トップバーでのゲストシフトなど、サントリーグローバルスピリッツ社と連携したさまざまな機会を提供する海外研修が特典として贈られた。サントリー株式会社HOSグローバル推進部部長の奥田秀朗氏が語る。

「ファイナリストの皆様にとっては、大変不慣れな環境だったとも思われますが、その中でも卓越した技術とお客様を思いやる心をご披露いただき、感動しました。我々サントリーも微力ながらこれからもこのバー業界の発展に尽力していきたい、その思いを改めて強く持った次第です」

洋酒文化継承への思い

 審査を待つ間、会場の外へ出ると、ホワイエにはファイナリストが仕上げたカクテルが並んでいた。こうして見ると、たった4つの課題製品からこれほどまで多種多様なカクテルが生まれるのかと感心してしまう。人の数だけ思いがあり、思いの数だけカクテルがある──そう考えると、現在まで紡がれてきた洋酒文化の歴史に思いを馳せずにはいられない。

ファイナリスト8名が作成した創作カクテル。作品名は前列左から「UCHIMIZU」「Shiki」「鳳鳴」「Silent Note」。後列左から「時環」「徳の雫」「MUSUBI〜結び」「Inherited Fizz」

ファイナリスト8名が作成した創作カクテル。作品名は前列左から「UCHIMIZU」「Shiki」「鳳鳴」「Silent Note」。後列左から「時環」「徳の雫」「MUSUBI〜結び」「Inherited Fizz」

 サントリーでは、酒類事業を営む上で「酒類文化伝承」はサステナビリティ経営の大事な要素と捉え、お酒の文化を守り、育み、伝承していく重要な活動と位置付けているという。その背景には、1899年の創業当初から「洋酒文化の創造・発展」への情熱がある。創業の精神から続く、洋酒文化の継承を使命と考え、脈々と受け継がれてきた貴重なバー文化を将来にわたってつなげていく。

ウイスキーの原酒をテイスティングする鳥井信治郎氏(サントリーHD提供)

ウイスキーの原酒をテイスティングする鳥井信治郎氏(サントリーHD提供)

「いいものをつくらないと売れない。ただ、いいものをつくっても、それを知ってもらわないことには売れない」(鳥井信治郎氏)

 鳥井氏はこの思想を強く抱き、日本に洋酒文化を根付かせるため、さまざまなPR活動に情熱を注いだ。その姿勢は、バーという場や、語り部となるバーテンダーの存在を大切にする考え方へとつながっていく。日本で初めてカクテルコンクールが開催されてから約90年余。現在も、その思いは受け継がれている。

参考:バーテンダーアワードとは|サントリーザ・バーテンダーアワード 2025|サントリー

 創作カクテルが展示されたスペースの横では、ファイナリスト全員がそのカクテルを来場者に振る舞ってくれていた。ステージ上で見たカクテルを一口味わうべく、彼らの前には長蛇の列が。それでも落ち着きを保ちつつ、行列に並ぶ客と言葉を交わしながら笑顔でカクテルをつくるバーテンダーたちの姿を見ていると、これから飲む1杯が楽しみでたまらなくなるものだ。

ファイナリスト8名の集合写真

ファイナリスト8名の集合写真

 これまでの100年間から、さらなる未来へ──鳥井氏が切り拓き、伝承されてきた“洋酒文化の創造・発展”への思いは、どこまでも羽ばたいていくのだろう。

「サントリー ザ・バーテンダーアワード2025」優勝者決定

サントリー ザ・バーテンダーアワード 2025公式サイト

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン