映画『テルマエ・ロマエ』主演の阿部寛(番組公式HPより)
アーカイブの活用で制作費を抑制
次に映画以外の特番を見ると、目立つのはアーカイブ映像を生かした特番。
4月5日の『特別編集版「ワンピース」エッグヘッド編&再開1話目~』、5月31日の『世にも奇妙な物語35周年SP~伝説の名作 一夜限りの復活編~』、8月16日の『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2025』(過去作6本・新作1本)は過去の作品を再編集や再放送したものでした。
また、2月22日と6月14日に放送された『小泉孝太郎&かまいたちの芸能人テスト』、4月26日放送の『芸能界ウケ宝映像グランプリ~芸人に聞いた一番ウケた瞬間30連発』、7月5日の『国民的アニメの祭典』、10月18日の『ものまね紅白歌合戦!今夜限りの史上最強ランキングスペシャル』は過去の映像をフル活用したバラエティ特番。「アーカイブを使って制作費を抑えよう」という方針が見られます。
さらに5月24日の『好き嫌いダウト最弱王決定戦』と6月21日の『BABA抜き最弱王決定戦2025夏』は過去に放送されたゲーム企画の再利用であるなど、全体的に低予算で制作できる特番が目立ちます。
特番らしい特別感を感じさせたのは、2月1日の『ビッグオセロ』、3月8日と8月2日の『ENGEIグランドスラム』、3月15日の『THE CONTE』、7月26日の『青春アカペラ甲子園!ハモネプハイスクール』、11月15日の『全国ハモネプ大リーグ2025』くらいでしょうか。その多くが以前から放送してきた特番であり、制作費などで苦しい状況の中、「これだけは守っていこう」という意思を感じさせられます。
「映画枠への回帰」は時代に逆行か
映画の放送数と内容、過去の映像を生かした企画の多さを見る限り、一連の騒動による経済的な影響は否めないでしょう。「レギュラー番組は何とか守っていけても特番枠を保つほどの余裕がない」というニュアンスがうかがえます。
もう1つ気づかされたのは、松本人志さん不在の影響。ほんの数年前まで松本人志さんがメインを務めた『人志松本のすべらない話』、『IPPONグランプリ』、『まっちゃんねる』、『まつもtoなかい~マッチングな夜~』、『HEY!HEY!NEO! MUSIC CHAMP』が『土曜プレミアム』で放送されていただけに、これらがごっそり抜けた痛手を感じさせられます。
ほぼ唯一の特番枠である『土曜プレミアム』(火曜20時台の『カスペ』もありますが、放送数が少なく映像集中心)は今後どうなっていくのか。
動画配信サービスの充実と使い勝手の良さを考えると、「さらに映画の放送を増やして、以前のような映画枠に近づけていく」という戦略は得策とは言い難いところがあります。
これまでフジテレビには「『土曜プレミアム』で評判のよかった特番をレギュラー化する」というバラエティの好循環があり、同局の番組表を支えていました。それだけに重要なのは、低予算でも視聴者を楽しませられる新たな企画をどれだけ生み出していけるのか。現在の苦境を抜け出し、「やっぱりフジテレビの番組は面白い」と思ってもらうためには、『土曜プレミアム』の特番が鍵を握っているのかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
