中国のSNSで広まった動画。左が金井正彰・外務省アジア大洋州局長、右が劉勁松・中国外務省アジア局長(中国国営テレビ電子版より、時事通信フォト)
「劉氏は、日本から訪れた高校生に対して、握手をするために自ら手を差し伸べていました。また、物議を醸している“両手ポケット”動画に映った険しい表情とは対照的で、ずっとニコニコされていた印象です。
このたびの局長協議において、立場上、毅然とした態度で臨んでいたのは間違いないでしょう。劉氏は、普段から外交官としての役割に徹する真面目な方で、公式な場でポケットに手を入れるようなことはしません」
劉勁松アジア局長はアフガニスタンで奨学金などを現地の子どもらに提供するなど外交官として活躍してきた(大使館のHPより)
中国の事情に詳しいフリージャーナリストの西谷格氏は、「自国民へのパフォーマンスとの見方が強いです」と語る。
「高市早苗首相の台湾有事に関する発言は中国メディアでも大々的に報じられており、中国人にとって最大の関心事。国民感情の昂りを抑えるためにも、自国の優位性をアピールすることが求められていたのでしょう。また、そうすることで国民は中国共産党の存在に安心感を覚えます。
最もわかりやすいのは、写真一枚で『我が国は、日本に対して強気な態度を取っているぞ』と見せつけることだったのでしょう。通常であれば、外交の場でメディアがどのような場面を撮影するか、中国側と日本側は事前に打ち合わせを行うのが一般的。ところが、今回はそうした相談や調整はなく、金井氏は何も知らずに自然体で出てきたところをいきなり撮影されてしまったようです。中国共産党による自国民への“パフォーマンス”に、まんまと乗せられてしまったのかもしれません」
緊張状態の続く日中関係。国民が注視している。

