中国の様子(西谷氏提供)
「かつての中国には、仕切りのない公衆トイレ、いわゆる『ニーハオトイレ』が一般的でした。隣の人と顔を合わせながら用を足す環境で育まれた文化では、排泄行為を他人に見られることへの羞恥心や抵抗感が、諸外国に比べて希薄にならざるを得ません。
私自身、中国現地での取材中に、幼児の屋外排泄をたびたび目撃しました。駅のゴミ箱の上、IKEAのゴミ箱、ショッピングモールの入り口、道路の生垣……。驚くべきは、周囲の人々もそれを咎めるでもなく、日常の風景として特に気に留めていなかったことです」
国立公園側は「看板設置」や「パトロール強化」を打ち出したが、果たしてそれで効果はあるのだろうか。西谷氏は、より踏み込んだ対策の必要性を説く。
「残念ながら、誓約書を書かせたり、看板を立てたりする程度では、抑止力は極めて弱いと考えられます。文化として定着している行動を変えるには、実利的な痛みを伴う措置が不可欠です。巡回強化に加え、違反者には高額の罰金を課す、あるいは一時的な身柄拘束や今後の入国制限を行うなど、『ルールを守らないと損をする』と明確に思わせる仕組みが必要です。言葉での説得が通じない以上、分かりやすいペナルティを用意しないと、同様のトラブルは今後も繰り返されるでしょう」
美しい漢拏山の自然が、これ以上汚されることがないよう願うばかりだ──。
