中国のレーダー照射を受け、閣議に臨む高市首相ら(12月8日、時事通信フォト)

中国のレーダー照射を受け、閣議に臨む高市首相ら(12月8日、時事通信フォト)

「台湾は米国の地域戦略の核心」

 アメリカでは、12月5日に公表された「2025年版米国家安全保障戦略(NSS)」で、台湾をインド太平洋の抑止・防衛の最優先項目と位置づけられた。

 この文脈は、「台湾有事=存立危機事態」論と理論的に整合的である。

 新版NSSを統括したのは、トランプ政権で対中強硬派として知られるエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)。

 コルビー国防次官は以前から以下のような点を主張してきた。

・台湾は米国の最優先の抑止地域
・台湾は米国の地域戦略の核心
・台湾防衛のために米国と同盟国の軍事力強化が不可欠

 高市発言を「渡りに舟」と見るのは極めて自然だ。

 米議会はどう見ているのか。上院軍事委員会スタッフの一人は次のように語る。

「日本の首相発言に中国が口を挟むのは内政干渉だ。中国の圧力に屈してはならない。」

 共和党・民主党とも見解の軸は一致している。

 筆者の整理としては、以下の4点に収斂していく。

1)高市発言は日米同盟の法的枠組みの範囲内
2)中国の過剰反応が、台湾危機のリアリティをむしろ高めた
3)「台湾有事=日本有事」が国内議論で定着する契機に
4)日米台の連携強化を正当化する材料となる

 筆者の分析にほぼ同意するシンクタンク研究者(元外交官)はこう言う。

「中国は怒れば怒るほど、日米の対中抑止網を強化してしまう。ワシントンが注目しているのは高市発言そのものではなく、中国側の反応だ。曖昧戦略の時代から、より明確な『台湾有事=日本有事』の方向へ移りつつある」

 12月6日には、沖縄本島南東の公海上空で、中国海軍空母「遼寧」から発艦した戦闘機が自衛隊機にレーダー照射を繰り返すなど、準軍事的挑発行動が発生した。

 この種の事態が続けば、米国も座視できない。

◆高濱賛(在米ジャーナリスト)

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