ゴールドジムで働く元千葉ロッテ投手の藤谷周平氏(撮影/藤岡雅樹)
トライアウト会場の例年の光景に変化
NPB復帰を目指す選手に対し、トライアウト会場で「一般企業のスカウトマン」が声をかける光景は、10年ほど前から見られた。十数社の企業人が選手に会社パンフレットを配ったり、警視庁の現役警官が公務員試験の案内をしたりする場面に筆者も出くわしたものだ。
今年はそんな光景に変化があった。トライアウトの主催者がNPBからプロ野球選手会に移り、人材サービス業も手がける「エイブル」が冠スポンサーに。同社が選手のセカンドキャリア支援を行なう代わりに、会場に訪れる一般企業の採用担当者の姿が格段に少なくなったのだ。選手会事務局長の森忠仁は言う。
「選手には、セカンドキャリアの選択肢を幅広く持ってもらいたい。(単年契約を基本とする)球団スタッフのオファーがあれば幸せなことかもしれませんが、いずれ再び押し出される人が出てくる。野球界から離れることを先延ばしにすると、セカンドキャリアだけでなく、サードキャリアの選択肢まで狭まってしまう。そこを危惧しています」
球場にはエイブルの人材紹介部の担当者が複数来場し、トライアウトを終えた全選手を別室に呼び、名刺を手渡していた。
今後、野球を諦めた選手に、希望の職種などをヒアリングし、マッチする企業を仲介していく予定だという。
(第2回につづく)
【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/1976年、宮崎県生まれ。ノンフィクションライター。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。他の著書に『甲子園と令和の怪物』がある。
※週刊ポスト2025年12月19日号
