いすみ市の事業所で容疑者は外国籍で初の採用者だった
「彼が中国語を喋ったところを聞いたことがありません。日本語はペラペラですよ。それに、彼は中国について『あちらの国』と言うんです。母国に対してかなり嫌悪感があったことは間違いないように思います。
そういう不審な点もあるし、文化も違うし、彼には気をつけよう、というのは社内全体の共通認識でした」
リュウ容疑者は写真に映ることを極端に嫌がることもあったという。
「彼は自分が写真に撮られることに対して、驚くほど抵抗感を示しました。社内みんなで写真を撮るときでも絶対に入りません。部署紹介用に所属する社員の顔写真付きプロフィールを作ったのですが、彼だけパンダの写真を載せていました」
第1回記事で報じたように、容疑者の自宅の通路側にある窓はすべてアルミシートで覆われていた。何かが他人の目に触れることを恐れていたのだろうか──。
「被害者と加害者には特段深い関係はなく、過去にトラブルもなかったと思います。個人的に2人でやりとりしたのは今回が初めてのはずです。被害女性は人事担当で、中途採用で入社しました。うちの工場に常勤している方ではなく、面談や指導など、特別に用事がある時に工場に来ていました。大阪の方ですが関西弁ではなくて、口調はいつも丁寧。差別的、暴力的な言葉を使うような方ではありません。
事件当日は、被害女性と容疑者が2人きりで個室で面談をしていたと聞いています。具体的な面談内容は同席していないため分かりません。ただ、被害者が工場に面談に来る時には、過去の例に習えば“何か”があるとき。おそらく部署異動か、勤務態度に問題があったか……。または彼に対する要望があったのかなと思います。そこでの話が彼にとって好ましくなかったのだろうと推測しています」
とはいえ、なぜリュウ容疑者は刃物を持っていたのか。そして躊躇なく被害女性を刺したのか。理解し難いことも多い。
「今思えば、彼は面談にリュックを持参していたのですが、そこに今回の凶器であるナイフが入っていたわけです。そのリュックを背負って毎日通勤していたので、毎日ナイフを忍ばせていたのかも……。想像すると恐ろしいです。
会社には金属探知機などはなく、安全面などの配慮に欠けていた面があったかもしれません。わざわざ面談に荷物を持ち込む事に対して、なぜ誰も違和感を覚えなかったのか、未然に防げる点があったのではと、会社全体で猛省しています」
事件で事件現場を目撃したことで、事件後眠れずにいるというこの関係者は取材の最後にこうも漏らした。
「事件は残念で、被害者、遺族の方に対しては本当に申し訳ない気持ちで一杯です」
何が動機となって容疑者は今回の痛ましい事件を起こしたのか。捜査の進展が待たれる。
(了。はじめから読む)
