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【櫻井よしこ】に関するニュースを集めたページです。

映画『軍艦島』 デタラメ歴史が欧米にも浸透する危険性
映画『軍艦島』 デタラメ歴史が欧米にも浸透する危険性
 今年の夏に韓国で公開された映画『軍艦島』は、史実と異なり荒唐無稽にすぎること、配給会社によるスクリーン寡占状態などで韓国国内でも非難され、今夏いちばんのヒット作にはならなかった。とはいえ、いちばんの話題作であることは事実であろう。文在寅大統領の暴走も泊まらず、かつて韓国政府がみずから消滅を決めた徴用工の個人請求権まで容認してしまった。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、国と国との約束が守れぬ国と、どう付き合うべきかについて論じる。 * * * そういう国なのだとしても、7月下旬に韓国で封切られた映画『軍艦島』の虚偽と捏造は、予想をはるかに超えるレベルのものでした。 映画で、強制連行された徴用工はあまりの過酷さに集団脱走を試み、日本人と壮絶な戦いを展開します。家族連れで島に連れてこられた女性や女児は遊廓で働かされ、反抗すれば罰として全身に入れ墨を入れられます。 なかには女性が無数の五寸釘が突き出た戸板の上を転がされ、血だらけで殺されるシーンもあります。もちろん日本にはこのような拷問の文化はありません。元になっているのは国連のクマラスワミ報告書で、北朝鮮の慰安婦の証言として、五寸釘や入れ墨の話が出てきます。 証言の出所のひとつは、紀元前500年から紀元後1000年までの中国の歴史を北宋の司馬光がまとめた『資治通鑑』だと考えられ、どの王朝のどの皇帝がこの刑罰を初めて行ったということが書かれています。 また、クマラスワミ氏は英語の文献として唯一、オーストラリアのジャーナリスト、ジョージ・ヒックス氏の『性の奴隷 従軍慰安婦』を参考にしていますが、藤井実彦氏は同書が金一勉という人物が書いた『天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦』に依拠することを突き止めました。さらに驚くことに、金氏の著書は『週刊大衆』や『週刊実話』などに掲載された官能小説や漫画、猟奇小説に依拠していました。こんなデタラメな国連報告書が、今もなお日本を苦しめ続けているのです。『軍艦島』の描写からは、日本に「ホロコーストの国」というレッテルを貼ろうとの意図が明らかに見てとれますが、韓国・中国のみならずドイツまでもが「日本も自分たちと同じように酷いことをした。しかも反省していないからもっと悪い」と同調しています。日本人にとってはあまりにも荒唐無稽で、「こんな話は誰も信じないだろう」と思ってしまいがちですが、放置していては欧米社会にまでデタラメな歴史が浸透してしまう危険性があります。 軍艦島が世界文化遺産に登録された直後の2015年7月6日、南ドイツ新聞は電子版記事で「強制連行された労働者が虐待された」「強制労働者1000人以上が島で死んだ」と報じました。軍艦島(端島)の旧島民たちはこの記事に怒り、今年1月23日、「真実の歴史を追求する端島島民の会」を結成し、南ドイツ新聞に抗議しました。 軍艦島では日本人と朝鮮人が同じコミュニティで仲良く暮らし、危険な採掘には熟練した日本人が当たったとも旧島民は言います。しかし南ドイツ新聞からは梨のつぶてです。 日本は一刻も早く官邸直属の情報発信センターを設置し、韓国だけでなく、アメリカをはじめとする国際社会に向けて、慰安婦や徴用工の真実を粘り強く発信し続けることが必要だと思います。 日本がどんなに韓国と友好関係を築こうと思っても文在寅大統領の姿勢が変わることはなく、韓国は強大な力を持つようになった中国にさらにすり寄っていくでしょう。一方で、アメリカはトランプ政権下で力を弱めていくことが予想されます。日本は経済力に加え、自らの手で自国を守る力を持つことが急務です。 白村江の戦い(663年、すでに滅亡していた百済の復興を手助けするために唐と新羅の連合軍との戦)で敗れた日本は、国防の重要性を知り、唐・新羅連合の日本侵攻に備えた体制固めを進めました。敗れても独立国家としての気概を保ち続けた、先人の歴史に今こそ学ぶべきだと考えます。※SAPIO2017年10月号
2017.09.09 07:00
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韓国人がおかしなことを鵜呑みにするのは漢字廃止が影響か
韓国人がおかしなことを鵜呑みにするのは漢字廃止が影響か
 文在寅大統領の暴走が加速している。慰安婦問題の日韓合意を反故にするような発言を繰り返すとともに、解決済みである徴用工の個人請求権まで容認してしまった。日本政府はこれに抗議、韓国で開催されるアジア中南米協力フォーラム外相会議に日本の河野太郎外相に招待状が届いていたが、欠席を決めた。なぜ、韓国は国と国との約束が守れず、韓国の人たちはおかしなことを鵜呑みにするのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、その背景を解説する。 * * * 日本と朝鮮半島は遥か古代から非常に難しい関係を続けてきました。穏やかな国、日本が対外的な争いに巻き込まれる時は、ほとんどの場合、朝鮮半島問題が原因となってきたのです。 古くは663年、すでに滅亡していた百済の復興を手助けするために唐と新羅の連合軍と戦い、敗北を喫しました(白村江の戦い)。13世紀に2度にわたってわが国が侵略された元寇は、元との戦いというより高麗との戦いでした。日清戦争は朝鮮半島に支配権を広げようとする清国を阻止することが目的であり、日露戦争もロシアが南下する危険性に備えた戦いでした。 そして今、日本に同じような危機が迫っています。北朝鮮が暴走すれば、否応なく日本にも飛び火します。本来であれば日米韓が連携して北朝鮮、そして背後にいる中国と対峙しなければなりませんが、韓国の文在寅大統領はまったく逆を向いています。 金正恩氏による大陸間弾道ミサイル実験や、そのことに対する国際社会の制裁強化の動きなど見れば、北朝鮮にすり寄り、「南北共同で強制動員被害の実態調査」をするなどと言っていられる状況ではないのは明らかです。しかし、文大統領は「反日」を親北政策に利用しようとしています。こんな状況では韓国が北朝鮮に事実上支配され、38度線が対馬海峡まで下りて来ることも、日本は覚悟しておかなければなりません。◆韓国の「悪意」 文氏は国際ルールを完全に無視し、「ゴールポストを動かす」どころか、国家間の取り決めをすべてひっくり返そうとしています。 8月17日の韓国大統領府での記者会見で、文氏は日本統治時代に動員され働いていた元徴用工らの「個人請求権は消滅していない」と述べました。もちろん個人請求権が「ない」ことは、1965年の日韓国交正常化の際に結ばれた日韓請求権協定で明らかです。この問題はすべて解決済みです。 左翼の盧武鉉大統領は2005年、日韓国交正常化交渉に関する全資料3万6000ページを公開させました。それを詳細に調査した結果、日本側が「韓国の被害者個人に対して補償する」ことを提案したのに対し、韓国側が「国として請求する」「個人に対しては国内で措置する」と主張し続けたことが明らかになったのです。そのため、さすがの盧氏も「すでに日本から受け取ったお金に個人補償分も含まれている」として、徴用工の個人請求権を諦めざるを得なかったのです。 ところが2012年、韓国の最高裁が「個人請求権は消滅していない」という驚くべき判断を下し、日本企業を相手どった訴訟で賠償命令が相次いで出されています。文氏の発言は韓国政府として初めて、個人請求権は消滅していないと正式に認めたものであり、今後、深刻な影響が生じてくるのは間違いありません。 慰安婦の「強制連行」も徴用工の「強制動員」もまったくの事実無根で、日本にとっては酷い「濡れ衣」です。しかし韓国は国家戦略として歴史を捏造し、それを世界に喧伝しています。儒教思想に基づく歪んだ優越意識から、韓国人にとって日本は「未開で野蛮な国」「蔑む対象」であり、今は「お金を取る国」なのです。相手を理解し、歩み寄ろうとするのは日本人の美徳ですが、その前に韓国が「悪意」を持って日本を貶めようとしていることに気づかなければなりません。 文氏は慰安婦や徴用工問題は、1965年の日韓請求権協定時には「わかっていなかった問題だ」とも述べました。しかし、もし彼らが主張するような酷いことが本当に行われていたなら、気づかないはずがありません。 少し考えればおかしいとわかることを、なぜ韓国の人たちは鵜呑みにしてしまうのでしょうか。拓殖大学国際学部教授の呉善花氏は漢字の廃止が影響していると指摘します。 日韓併合当時、韓国では難しい漢字を使っており、庶民はほとんど読み書きができず、識字率は6%に過ぎませんでした。そのため日本は学校の数を59倍の5960校に増やし、庶民にハングルを教えました。ハングルは日本語でいえば平仮名やカタカナのようなもので、「漢字ハングル交じり文」を普及させたわけです。福澤諭吉らの尽力もあり、朝鮮人の識字率は1943年には22%にまで上がったそうです。 ところが1970年代に入ると韓国は漢字を廃止し、ハングルだけを使うようになりました。それによって韓国人の思考能力が著しく低下したと指摘する人は少なくありません。 しかも、最近では研究者でさえ漢字が読めなくなっているため、歴史的な資料を読むことができない。そのため韓国人は自国の「過去」の事実を知ることができず、自分たちに都合のいい「幻想」を歴史的事実だと思い込むようになったと呉氏は分析するのです。※SAPIO2017年10月号
2017.09.04 07:00
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在韓35年の教訓「韓国に関心を持っても、深入りはするな」
在韓35年の教訓「韓国に関心を持っても、深入りはするな」
 日本では8月になると“終戦モノ”といって戦争時代の歴史を振り返る。終戦の日の15日には天皇陛下が出席される政府主催の記念式典も行われる。そのコンセプトの基本は「追悼と平和」だが、日本支配から解放された韓国では15日は祝日で、大統領が出席する政府主催の記念式典があり、マスコミや各種イベントは“反日モノ”でにぎわう。 映画界など毎年そうだ。今年の話題は2本で、すでに上映中の『朴烈』は、大正時代の日本で皇室テロを計画した無政府主義者の朝鮮人青年・朴烈(21歳!)と内縁の妻・金子文子の話。反日テロにプラス、当時いわば“翔んでる女”だった日本女性がからむ日韓ラブストーリーだから観客には心地よい? ただ映画の冒頭シーンがよくない。アルバイトで人力車の車夫をしていた朴烈が、日本人客から代金を地べたに投げつけられ、「足りない」というと「朝鮮人のクセに生意気だ! さっさと朝鮮に帰れ!」と怒鳴られ、踏んだり蹴ったりの暴行を受ける。“料金踏み倒し”にいわれなき暴行で“朝鮮人差別”を象徴したつもりだろうが、これは日本ではありえない。ただ、映画は「大逆罪」に問われた二人の裁判風景が詳しく描かれ、日本人の良心的弁護士も登場するなど近代国家日本の法治主義が印象的である。このあたりは韓国人観客には新しい日本発見になるかも。 もう一つの『軍艦島』は7月下旬封切りだが、ユネスコの世界遺産に登録された長崎の旧炭鉱の話。『朴烈』のテロ計画もそうだが、近年の韓国映画界の“反日モノ”は日本人をバッタバッタやっつける活劇調が多い。したがって『軍艦島』も苛酷な炭鉱労動で虐げられた朝鮮人徴用工が“反日抵抗”に立ち上がるといったストーリーになるようだ。 筆者は韓国留学の1970年代から韓国の映画やテレビドラマを観てきた。夏の8・15モノというと90年代中ごろまでは「日韓和解の試み」みたいなものも結構あったが近年はそんな迂遠な(?)話はなく、勇ましい韓国人が日本を痛めつける話がもっぱらだ。 というわけで日韓ともども毎年8月は歴史回顧の季節だ。そこで筆者も今年はそこに加わらせてもらおうと一冊の本を出版した。『隣国への足跡/ソウル在住35年 日本人記者が追った日韓歴史事件簿』(KADOKAWA刊)で、筆者の個人的体験を盛り込んだ激動の日韓歴史物語であるが、「これまで日本はこの隣国にいかにかかわったか」を探ることで今後の付き合い方を考えた。結論的にいえば「相手は永遠に隣にいる。関心は大いに持て。しかし深入りするな」である。 尊敬する櫻井よしこさんが最近、『週刊新潮』(6月8日号)の連載コラムで「白村江の戦い、歴史が示す日本の気概」として古代7世紀、日本が百済支援のため朝鮮半島で唐・新羅連合軍と戦った故事を高く評価していた。 こうした朝鮮半島をめぐる「日本の気概」は13世紀の元寇、16世紀の文禄・慶長の役(壬辰倭乱)、日清・日露戦争、韓国併合、満州建国、大東亜戦争、朝鮮戦争にも関係しているのだが、その「気概」が「深入り」となって結果的に日本に禍をもたらしたことも一方で念頭に置かねばならないと思う。 拙著では日本の敗戦に伴う朝鮮半島からの「日本民族苦難の引き揚げ」にページを割いたが、北朝鮮からのある引き揚げ者は「戦争がなければ敗戦の悲運はない。戦争は絶対に仕掛けてはならないが、仕掛けられた戦争には絶対負けてはならないことを学んだ」と痛切に証言している。 拙著では、戦争に負けたにもかかわらず日本人が見せた気概も多く紹介している。そしてこの隣国相手の「引きこみ、引き込まれ」の危うさも。「気概」もまた民族的教訓をしっかり胸に刻んでこそ生きてくる。●文/黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)【PROFILE】くろだ・かつひろ/1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。※SAPIO2017年9月号
2017.08.14 07:00
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櫻井よしこ氏 サムライ精神抱くこれまでの人生
櫻井よしこ氏 サムライ精神抱くこれまでの人生
 ジャーナリスト・櫻井よしこは1945年10月、日本の敗戦直後で大混乱の中にあったベトナム・ハノイの野戦病院で生を受けた。アジア各国を舞台に手広く貿易を営んでいた父がハノイに居を構えていたからだ。母は万一、フランス軍や連合軍がハノイに攻め込んできた時には、3階の窓から飛び降りて死ぬ覚悟を決めていたという。 翌1946年5月、すべての財産を没収され、一文なしになった櫻井一家は、米国船籍のリバティ号に乗って命からがら浦賀にたどり着いた。しばらく新潟県小千谷の母の実家で骨を休めた後、母の実家から幾ばくかの資金を工面してもらい、父の地元・大分県中津市で再起を図る。住んだのは引揚者優先の「六軒長屋」と呼ばれる小さな家だった。「木造の質素なおうちでね。でも敗戦した日本政府が住居のない国民のために建ててくれた精一杯の住宅ですよ。水道はなくて、水は井戸水を水瓶に蓄えていました。少ししてから隣町のちょっと上等な二軒長屋に引っ越して、中学2年の夏まで過ごしました」 当時の思い出を聞くと、「遊んだ記憶しかないのよ」と櫻井は笑う。「蓮華畑で転げ回ったり、近くの山国川で泳いだり。新田の浜は遠浅で、アサリやハマグリがたくさん採れた。初夏になると水を張った田んぼに周囲の山々が映って、本当に綺麗でした。秋は黄金色に染まって、風が渡っていくと黄金の波ができる。美しい日本の原風景ですね。みんな貧しかったけれど、楽しく幸せに生きることが仕事のような毎日でした」 やがて父が家に居つかなくなると、母は子供たちを連れて再び新潟に戻ることを決意。仕事を求めて小千谷からほど近い長岡市に移った。 気候も温暖で開放的だった中津から、長岡藩時代からの質素倹約の気質が色濃く残る雪深い地へ。多感な年頃の櫻井は、同じ日本でありながらまったく異なる風土や文化を知る。 高校は、明治5年創立で男子は真冬でも素足で過ごすという「剛健質撲」「和而不動」の長岡高校に通った。「私の精神のひとつのコアが長岡ですね。ひと言でいうならサムライ精神、武士の魂です」 高校卒業後、櫻井は日本の大学には進学せず、ハワイに渡る。父親がハワイでレストランを経営しており、母に「よしこちゃん、ハワイに行って、お父さんの世話をしてさしあげなさい」と頼まれたからだ。 父の店で働きながらハワイ大学に入学。父がハワイから撤退した後も、アルバイトで日本語を教えながら学費を捻出し、ハワイ大学を卒業した。「ハワイでの経験は、私の目を世界に見開かせてくれました。当時、ハワイ大学には64か国の学生が集まっていて、『私は日本人なんだ』という自覚はものすごい目覚めでした」 日本語の授業が好評だったこともあり、当時は「漠然と学校の先生になれればいいなと思っていた」という。 帰国後、櫻井はふとしたきっかけでクリスチャン・サイエンス・モニター紙の記者、エリザベス・ポンド氏を紹介され、助手兼通訳として働き始める。それはまさに運命的な出会いだった。「ジャーナリズムの世界に入って、最初にポンドさんという優秀な記者と一緒に仕事ができたことは、私にとって本当に好運でした。とくに取材に同行して質問する側と答える側の両方の言葉を通訳することは、ものすごくいい勉強になりましたね。総理大臣、経団連会長、アーティストなどいろいろな人の取材に同行させてもらい、彼女には心底感謝しています」 1971年にクリスチャン・サイエンス・モニターの日本支局が閉鎖されると、櫻井はフリーのジャーナリストとして一本立ちし、アジア新聞財団(PFA)の支局長になってからも精力的に取材し、記事を書き続けた。 大きな転機は1980年、34歳の時。日本テレビ系の夜のニュース番組『きょうの出来事』のキャスターへの起用である。同番組プロデューサーで、現在は櫻井が立ち上げた『言論テレビ』の社長を務める安藤信充氏が振り返る。「最初は1時間枠で、男性アナウンサーとの2人体制。しかし視聴率が思わしくなく、30分枠で櫻井さんが1人でキャスターをやるようになってから、視聴率が急上昇した。時には20%を超えて、久米宏さんの『ニュースステーション』の上を行っていました。櫻井さんはどんな時でも絶対にブレない。それは当時も今も変わりません」 薬害エイズ問題では、危険な非加熱血液製剤を注射され、理不尽にもエイズに感染した血友病患者の無念を掬いあげ、薬害を生み出した元凶である安部英・帝京大学副学長とミドリ十字の癒着、厚生省の闇を鋭く追及。1994年に出版した『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中央公論社)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。 番組は好調だった。だが、櫻井はそこに安住しなかった。1996年、50歳の時に『きょうの出来事』を降板する。「50歳になる直前に、日本テレビが番組15周年のお祝いをしてくださったんです。無我夢中で走り続けていたので意識もしていませんでしたが、その時、『ああ、もう15年だ』と。同時に『私は言論人なんだ。自分自身の論陣を張らないでどうする』という思いが湧き上がってきたんです」 外交や国防、憲法改正、歴史問題などに対する揺るがない姿勢と鋭い舌鋒ゆえ、ともすると強硬派のイメージを持たれるが、その根っこには、薬害エイズの被害者や北朝鮮による拉致被害者家族、中国に侵略され虐殺や激しい弾圧に晒されているチベットやウイグル、内モンゴルの人たちへの支援など、弱者に対する優しい視線がある。「弱い者をいじめたり殺したりすることは絶対に許せません。弱きを助けるのは人類普遍の価値観。人間はフェアでなければならないと思います」【PROFILE】さくらい・よしこ/1945年10月26日生まれ。新潟県長岡市出身。米紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」東京支局員などを経て、1980年より『きょうの出来事』(日本テレビ系)キャスターを16年間務める。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中央公論社)で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。国家基本問題研究所理事長、『言論テレビ』キャスター。『明治人の姿』(小学館101新書)など著書多数。最新刊は『一刀両断』(新潮社)。●取材・文/大門龍 撮影/三島正※週刊ポスト2017年7月7日号
2017.07.01 07:00
週刊ポスト
櫻井よしこ氏 大好きな105歳の母を自宅で介護している
櫻井よしこ氏 大好きな105歳の母を自宅で介護している
 朝7時30分。広々とした玄関脇の小部屋から、ドライヤーの音が響く。ジャーナリスト・櫻井よしこ(71)が美容師の桑野眞澄さんに、いわゆる“よしこヘアー”をブローセットしてもらっているところだ。その間も櫻井は口元をキュッと引き締めながら自らの原稿にペンを入れている。撮影のOKは出たが、話を聞くのは難しそうだ。「午前10時には家を出るのだけれど、その前にこの原稿と、もう1本別の原稿を仕上げなければいけないの。ごめんなさいね」 そう言ってニコッとあの笑顔を向けられたら、ハイと頷くしかない──。 雑誌や新聞の連載に単行本の執筆、理事長を務める国家基本問題研究所の月例報告会やシンポジウムなどのイベント、インターネットテレビ『言論テレビ』の準備と出演、全国各地での講演活動。取材や情報収集、意見交換のために人に会うことも欠かさない。土日もほとんど休めない多忙ぶりだ。 桑野さんがそんな櫻井の髪を担当するようになって、もう30年以上。櫻井が休みの時以外は毎朝自宅を訪れ、早い時には6時前ということもある。「だから、病気ができないんですよ(笑い)。櫻井様は本当にお元気で、『朝は爽やかだから大好き』っておっしゃいます。疲れたご様子などは見たことがありません」(桑野さん) 地方に行っても必ず日帰りするが、それは105歳を迎えた母・以志さんを自宅で介護しているからだ。「母が95歳の時にくも膜下出血で倒れたのをきっかけに、一緒に住み始めました。娘は私ひとりだから、いずれは自分が母の老後を引き受けるつもりでいたんです。母のことは大好き。一緒にいるとますます好きになる。母の性格も価値観も大好き」【PROFILE】さくらい・よしこ/1945年10月26日生まれ。新潟県長岡市出身。米紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」東京支局員などを経て、1980年より『きょうの出来事』(日本テレビ系)キャスターを16年間務める。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中央公論社)で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。国家基本問題研究所理事長、『言論テレビ』キャスター。『明治人の姿』(小学館101新書)など著書多数。最新刊は『一刀両断』(新潮社)。●取材・文/大門龍、撮影/三島正※週刊ポスト2017年7月7日号
2017.06.30 11:00
週刊ポスト
櫻井よしこ氏「安倍政権は大事。今鳩山さんや菅さんなら…」
櫻井よしこ氏「安倍政権は大事。今鳩山さんや菅さんなら…」
〈安倍一強〉──安倍政権は、しばしば朝日新聞などにそう批判的に報じられる。だが、それは本当に国民にとって悪いことなのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、こうした批判に苦言を呈する。 * * * メディアは〈安倍一強〉という言葉を批判的な意味をこめて用います。例えばこの3月には朝日新聞は〈安倍一強 名脇役のいない嘘っぽさ〉というコラムを掲載し、「1強」というタイトルでのシリーズ連載もしました。 しかし、〈一強〉の何がいけないのでしょうか。 朝日新聞は昨年10月21日の社説では〈安倍政権 見過ごせぬ慢心と緩み〉と題してこう書きました。〈自民党総裁任期の延長が、わずか1カ月弱、3回の議論で決まった。目立った異論もないまま、首相は2018年の総裁選に3選をめざして立候補できるようになる。ポスト安倍の有力候補がいないことの表れでもあろうが、首相官邸の意向に背く言動を慎む空気が党内を覆っていることは隠しようがない〉 自民党内には石破茂氏や小泉進次郎氏のように堂々と執行部を批判する議員もいます。反対意見を言う人がいる。実際に反対意見は表明されている。それでも安倍首相の力は強い。それでよいのではないですか。民進党の蓮舫さんのように、反対意見に圧倒されて指導力を発揮できないより、ずっといい。 私は総裁任期は3期9年でも短いくらいで、そもそも期限を設ける必要もないと考えています。首相が十分な務めを果たせなくなったら、選挙で交代させればいい。それが民主主義国家です。 第一次安倍内閣が1年で倒れた後、福田、麻生、鳩山、菅、野田と、1年前後で首相がコロコロ代わりました。その間、日本は外交、経済、国防の全ての面で必要な手を打つことができず、国際社会における日本の立場は弱まるばかりでした。 中国の習近平主席の任期は10年ですが、独裁が強まるなかでさらに延長される可能性があります。ロシアのプーチン政権は首相時代をはさんで通算12年、これも独裁政権です。 独裁者は長期政権で求心力を維持しつつ、外交や安全保障で攻勢をかけてきます。それに対して民主主義政権の場合、選挙を闘いながら、民意を掬い上げながらの政治です。国民の信頼がなくなれば倒れます。それでもアメリカの大統領は最低でも4年間、近年は2期8年が続いています。 きちんとした民主的な指導者が一定程度の長期政権を維持して、国益を守りつつ政治を担うことは国民のためにもなります。現在の日本にとって安倍政権は大事な政権です。そのことは、もし今、鳩山由紀夫さんや菅直人さんが首相だったらどうなるかと考えるだけで、わかってもらえるでしょう。 日本が「自国は自力で守る」という国家の基本を整えることは急務です。国民もそれをよく理解していると思います。 そして、日本国の真の自立に向けて、必要な施策を講じてくれるのが安倍首相だと期待しているのでしょう。内閣支持率が高いのはその表れだと思います。〈一強〉という状況は、民主党政権が手ひどく国民の期待を裏切った結果であり、国民が正当な選挙で選んだ結果なのです。 朝日新聞などは “安倍憎し”で批判のための批判をするのかもしれませんが、結果として自らの信頼を損なっていることを自覚すればよいのではないですか。●さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。※SAPIO2017年5月号
2017.04.13 11:00
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櫻井よしこ氏「朝日は民主党政権を一方的に批判した?」
櫻井よしこ氏「朝日は民主党政権を一方的に批判した?」
〈安倍一強〉安倍政権は、しばしば朝日新聞などにそう批判される。だが、それは本当に国民にとって悪いことなのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「ためにする批判だ」と指摘する。 * * * 言うまでもなく民主主義を支える根幹に言論の自由、報道の自由があります。メディアが時の政権を監視し、必要とあれば批判するのは当然です。むしろメディアには政府に対する“チェック機能”の役目が期待されています。ただしそうした報道や批判は、あくまでも事実に基づいていなければなりません。 ところが朝日新聞などの安倍批判は往々にして「ためにする批判」でしかないと思います。一例が今年1月22日付の社説です。朝日新聞は安倍首相の施政方針演説についてこう書きました。〈「意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論をたたかわせ、結果を出していこう」首相は演説で、民進党など野党にそう呼びかけた。だが先の臨時国会での安倍政権のふるまいは違った。(中略)与党は採決強行を繰り返した〉〈数の力で自らの案を押し通すやり方を「建設的」とは言わない〉 これだけを読むと、安倍政権がいかにも“独善的”だというふうに見えます。しかし、野党のふるまいはどうだったでしょうか。例えば安保法制の議論では、民進党をはじめとする野党の議員は、国会を出てデモの列に加わりました。野党の議員たちは、「建設的な議論」どころか立法府の役割を放棄したのです。 また、〈数の力〉を否定することは多数決の否定であり、これでは民主主義は成り立ちません。 民主党政権時代、与党としての民主党は3年3か月の間に、衆参両院の委員会で24回も強行採決をしています。朝日新聞がその時、安倍政権に対するのと同じように民主党を批判したでしょうか。そうではなかったと思います。朝日新聞は一方の非を棚に上げて、安倍政権に狙いを定めたかのように、そう思われても仕方がないほど、一方的に批判しているわけです。 米軍普天間飛行場の移設問題についても同日付の朝日新聞社説は、〈沖縄の未来をつくる主人公は沖縄に住む人々だ。その当たり前のことが、首相の演説からは抜け落ちている〉 と批判しました。沖縄に辺野古移設への批判があるのはよくわかっています。同時に、私は辺野古地区にも実際に行って取材しましたから、反対論ばかりではないことも知っています。むしろ、久辺3区と呼ばれる地元では受け入れ派のほうが圧倒的に多いのです。 久辺3区という地元の中の地元の人たちは、米海兵隊と長年にわたって非常によい関係を築いてきました。また、この人々は地政学上、沖縄が中国に席巻されてしまえば、沖縄だけでなく日本全体が危機に瀕することを理解しています。普天間飛行場の移設はもちろん沖縄の問題ですが、日本全体の問題でもあるのです。この社説にはこうした視点が完全に〈抜け落ち〉ています。 1月26日の社説では〈財政再建 決意ばかりの無責任〉と題して、安倍首相の国会答弁を糾弾しました。〈首相は経済成長による税収増を強調するが、それだけでは達成はおよそ見通せない。にもかかわらず、歳出の抑制・削減や、消費税を中心とする増税には及び腰である。どうやって実現するのか、決意ばかりで具体的な説明はない。あまりに無責任だ〉 財政再建は、民主主義国家においては極めて難しい課題です。予算のどこかを削れば必ず反対が起きます。 日本経済は為替レートなど外的要因を受けて、経済成長の目標達成は思い通りにいきません。アベノミクスによる成長は足踏みしているのは事実だと、私も思います。それでも税収は増え、失業率が下がるなど、かつての民主党政権下の経済よりずっと好転しています。 朝日新聞はそうした改善された面は見ないかのように〈歳出の抑制・削減や、消費税を中心とする増税には及び腰〉と批判しています。 ということは、歳出の削減や増税をすべきと考えているのでしょうか。であるなら、そういう主張も展開してほしいですね。しかし、もし政府が歳出削減や増税を打ち出せば、また朝日は大きな批判を繰り広げるのでしょう。●さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。※SAPIO2017年5月号
2017.04.08 16:00
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百田尚樹氏 中国や北朝鮮に蹂躙されなければ日本目覚めない
百田尚樹氏 中国や北朝鮮に蹂躙されなければ日本目覚めない
 中国の脅威は日に日に増し、2017年中にも尖閣諸島が奪われる懸念がある。今年は、国を守るために重要な憲法改正論議も山場を迎える可能性がある。が、いざ憲法改正となると“内なる敵”がいるという。櫻井よしこ氏と百田尚樹氏が、90分にわたって論じ合った。 * * *櫻井よしこ:日本国民を守るためには、まさに憲法改正が急務です。ところが、国会でもなかなかその機運は盛り上がってきません。百田尚樹:衆参とも「改憲勢力」が「3分の2以上」だと言われますが、正直、疑問ですね。公明党が9条の改正に本当に賛成するのかといえば、かなり怪しい。 さらに国民投票になると、朝日新聞や地上波テレビは一緒になって「平和を守れ」「戦争するな」と大キャンペーンを張るでしょう。2分の1の賛成を得るのは容易ではありません。櫻井:私は女性たち、とくに子供を持つママたちは、多くが反対に回るのではないかと懸念しています。知り合いの保守の方でも、9条改正となると「戦争になるから反対」という人が多くいます。百田:想像がつきます。「子供を戦場に送るのか」という左翼が作ってきたイメージが浸透していますから。しかし、「戦争になって子供が巻き込まれる」ことが想像できるなら、現行憲法を守るあまりに中国軍が侵略してきて子供が虐殺される姿や、自分たちの娘が中国軍の兵士に陵辱される姿も想像できないもんかな、と思いますね。櫻井:それでも私は、憲法改正に関して日本人に対する希望を失ってはいません。日本は明治維新からたった27年後に、日露戦争でロシアに勝つまでになりました。日本人はいざという時には一丸となって立ち向かえる人たちだと思うのです。百田:うーん。櫻井:百田さんはここまで楽観的になれない?百田:あってはならないことですが、中国や北朝鮮に蹂躙され、相当な犠牲が出なければ目覚めないかもしれない、とさえ思います。 福島県で仏像や神社の石像が次々に壊された事件で、韓国人が逮捕されました。日本は、貴重な仏像なども含めて特に柵を設けず、訪れる人を「壊すはずがない」と信頼しています。ところが今回の事件が起きた。 壊され、首がもげて転がっている仏像や石像が、近未来の日本人の姿に重なって仕方がありませんでした。櫻井:日本が『カエルの楽園』になってしまうのか、それとも幻想から目を覚まして立ち上がるのか。今年は日本人にとってターニングポイントになりますね。【PROFILE】さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。95年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。【PROFILE】ひゃくた・なおき/1956年、大阪市生まれ。同志社大学中退。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」などの番組構成を手がける。2006年、『永遠の0』で作家デビュー。近著に『カエルの楽園』『幻庵』などがある。※SAPIO2017年2月号
2017.01.12 07:00
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百田尚樹氏 地上波テレビは左翼だらけという印象
百田尚樹氏 地上波テレビは左翼だらけという印象
 中国の脅威は日に日に増し、2017年中にも尖閣諸島が奪われる懸念がある。今年は、国を守るために重要な憲法改正論議も山場を迎える可能性がある。が、いざ憲法改正となると“内なる敵”がいるという。櫻井よしこ氏と百田尚樹氏が、90分にわたって論じ合った。 * * *百田尚樹:尖閣有事の際、米軍が出てくるために、絶対条件がひとつあります。櫻井よしこ:何でしょう?百田:自衛隊が出て戦うことです。櫻井:それは間違いありませんね。百田:自衛隊が後ろに隠れて「米軍さん、なんとかお願いします」と言ったって、米軍は戦いません。まずは自衛隊が出動しなければ話になりません。総理大臣が自衛隊に防衛出動命令を下せるかどうかは、世論の後押しにかかっています。櫻井:しかし、朝日新聞をはじめとする左翼メディアが猛反対することは、容易に想像がつきますね。百田:朝日新聞は「たかが島のために自衛隊員の命が失われていいのか」「尖閣を奪い返そうとしたら大きな戦争に発展して、市民に犠牲が出る」などと、一大キャンペーンを張るでしょう。櫻井:百田さんの著書『カエルの楽園』では、「1、カエルを信じろ。2、カエルと争うな。3、争うための力を持つな」という「カエルの三戒」を守っていれば平和は保たれると信じていたツチガエルたちが、“隣の国”のウシガエルに目をくりぬかれ、腕をちぎられて食べられてしまいますね。百田:はい。「カエルを信じろ」は「諸国民の公正と信義に信頼して」と謳う憲法前文、「カエルと争うな」「争うための力を持つな」はそれぞれ憲法9条を指しています。三戒を守ることが絶対と信じることで国が滅び、虐殺されるという寓話です。櫻井:「三戒があるから平和が保たれている」と主張するカエルがいて、ウシガエルが侵入してきても「話し合えばわかる」「刺激するな」と。百田:朝日新聞みたいですよね(笑)。私が懸念しているのは、戦後70年たって、多くの国民が自虐史観に根ざした戦後教育を受けてきたことです。「洗脳」が100%完了したわけです。櫻井:私も、現行憲法の精神が日本人のすみずみまで行き渡ってしまったように感じます。百田:最近では、最も影響力の大きい地上波テレビが、おぞましいくらいに左翼的な考え方に偏っていることも問題だと思っています。安保法制の議論でも、賛成と反対の両論を半分ずつ取り上げるべきです。ところが調べてみると、反対意見を流している時間のほうが圧倒的に長い。櫻井:とても公正とは言えませんね。百田:私も、地上波テレビからはすっかりお呼びがかからなくなりました。私がテレビで「憲法は改正すべき」などと言うと面倒だと思っているのでしょう。 地上波テレビは左翼だらけという印象です。しかも怖いのは、日本は「テレビの言うことを信じる」という人の割合が先進国の中で最も多いこと。さらに、朝から晩までテレビばっかり見ていて、他のメディアは全然見ないという人が一定数いることです。櫻井:現在の憲法を大事に持ち続けると、逆に日本という国が滅んでしまうという「正しい情報」を広く国民に伝えていくことは難しいですね。百田:トランプが本当に「在日米軍を引き揚げる」という段になったら、それがメディアや国民にとって踏み絵になるんじゃないでしょうか。共産党は「どうぞ出て行ってください」というでしょう。民進党は、「在日米軍にいてもらいたい」ということは軍の必要性を認めることになって自分らの主張と矛盾しちゃうから、右往左往するのでしょうね(笑)。 トランプは日本にとってまさに「黒船」です。約160年前の黒船は日本に開国を迫ったけれど、トランプの黒船は逆に「俺たちは引き揚げるぞ」「後は自分で守れや」と。櫻井:その通りです。日本は憲法9条を戦後約70年も守ってきましたが、黒船・トランプ政権の誕生が日本を大きく変えるかもしれません。【PROFILE】さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。【PROFILE】ひゃくた・なおき/1956年、大阪市生まれ。同志社大学中退。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」などの番組構成を手がける。2006年、『永遠の0』で作家デビュー。近著に『カエルの楽園』『幻庵』などがある。※SAPIO2017年2月号
2017.01.11 07:00
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百田尚樹氏 中国は尖閣どころか本気で沖縄まで狙っている
百田尚樹氏 中国は尖閣どころか本気で沖縄まで狙っている
 中国の脅威は日に日に増し、2017年中にも尖閣諸島が奪われる懸念がある。今年は、国を守るために重要な憲法改正論議も山場を迎える可能性がある。が、いざ憲法改正となると“内なる敵”がいるという。注目の2人が、90分にわたって論じ合った。 * * *櫻井よし子:今年は日本にとって正念場の年になります。中国がいつ尖閣諸島を奪いに来てもおかしくありません。百田尚樹:本当ですね。ひとつのシナリオとして、中国の偽装漁民がエンジントラブルを装って尖閣に上陸する。そこで中国の軍艦が自国民保護の名目で尖閣にやってくる。もちろん日本側も急いで尖閣に向かいますが、中国軍の上陸を阻止できるかどうか。ここが勝負の分かれ目になります。櫻井:中国の軍拡の速度と規模はすさまじいものがあります。領海侵入するのは主に中国海警局所属の艦船と漁船です。海警の船は、軍艦に白いペンキを塗っただけのものもあり、実質的には軍艦です。彼らの背後には、いつも中国海軍所属の軍艦が2隻、控えています。 気がかりなのは、これまで北緯27度のラインより南には入らなかった中国軍艦が、最近ではそのラインを突破してきている。極めて危険な段階に入ってきたと思います。百田:空でも、中国軍の戦闘機に対する自衛隊機のスクランブル発進が急増しています。昨年12月には、中国国防部が「妨害弾」を受けたと主張しました。 妨害弾とは自動追尾ミサイルをかわすための「フレア」のことで、ロックオンされるなど、よほど危険が迫らないかぎり使わないものです。相手がいきなり殴り掛かってきたので身構えたら、「安全を脅かした! 危ないやないか!」というのと同じで、おかしな話ですよ。櫻井:領空侵犯されたら、他の国なら撃墜してもおかしくありません。日本はそれができないうえ、相手から攻撃を受けない限り手を出せない。現行憲法下では、もし領空侵犯機を撃墜したら、自衛隊のパイロット個人が刑事罰を科せられてしまう可能性が高いのです。百田:本当にアホな話です。昨年12月に自衛隊がフレアを撒いたと思われる中国機の編隊の一部は、そのまま台湾に向かいました。台湾は戦闘機を出して中国機をロックオンしたら、すぐに中国機は帰って行ったそうです。自衛隊機もロックオンすればいいんですよ。櫻井:それができないというのはかえって危険ですね。百田:中国機は、自衛隊機が手を出せないのを知っているから、好き勝手し放題。かたや自衛隊のパイロットはいつ撃ち落とされるかもわからない極限の緊張状態を強いられる。中国機によって、自衛隊は1年に500回以上もスクランブル発進させられています。自衛隊のパイロットを疲弊させることも、中国の狙いのひとつだと思います。櫻井:中国の空軍力の増強も尋常ではありません。すでに第四世代の戦闘機の数でも自衛隊を大きく上回り、さらに宇宙にまで軍拡を進めています。百田:それでも、「戦わずして尖閣を奪いたい」というのが中国の本音でしょう。尖閣の局所戦だとしても、もし中国側が負けたら習近平はエラいことになりますからね。 鍵は米軍が尖閣に出てくるかどうか。もし米軍が100%出てこないと確信したら、中国はすぐに来ます。必ず来ます。だからトランプ大統領が就任したら、あの手この手で探りを入れてくるでしょう。そこで米軍が来ないと確信したら、1か月、2か月のうちに行動を起こしてもおかしくありません。私は中国は、尖閣どころか、本気で沖縄まで狙っていると思います。櫻井:中国は以前から、沖縄も「中国領」と主張していますからね。そうならないためには、日本人の覚悟が問われます。【PROFILE】さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。95年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。【PROFILE】ひゃくた・なおき/1956年、大阪市生まれ。同志社大学中退。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」などの番組構成を手がける。2006年、『永遠の0』で作家デビュー。近著に『カエルの楽園』『幻庵』などがある。※SAPIO2017年2月号
2017.01.06 11:00
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日本はこれ以上韓国に深入りしないほうが賢明
日本はこれ以上韓国に深入りしないほうが賢明
 韓国の歴代大統領は悲惨な末路を辿り、朴槿恵(パククネ)政権も民衆の怒りで追い込まれ、条件付きの辞意を表明した。ジャーナリストの櫻井よしこ氏と拓殖大学教授の呉善花氏は朴政権スキャンダルの先にある「日本の危機」を指摘する。 * * *櫻井よしこ(以下、櫻井):韓国の歴代大統領は退任後、死刑判決や有罪判決を受けたり、自殺に追い込まれたりと、多くが悲惨な末路を迎えました。もちろん権力を利用して私腹を肥やしたにせよ、権力の座を下りたとたんに国民が手の甲を返す。これも韓国の民族性と関係があるのでしょうか?呉善花(以下、呉):朝鮮王朝時代に取り入れた朱子学の影響で、若々しく輝いているものには従うけれど、廃れゆくものは穢れたものであり背を向けるという価値観が韓国人にはあります。死は穢れなので、亡くなった人が身につけていたものはすべて燃やします。日本のように形見分けという考え方はありません。 歴史も同様で、前の政権のものはすべて壊してしまう。だから韓国には歴史的なものがあまり残っていないのです。高麗時代に栄えた仏教の遺跡も朝鮮王朝時代にことごとく破壊されて、発掘で出てくる仏像は壊されたものがほとんどです。櫻井:中国の易姓革命によく似ていますね。新しくできた王朝が歴史も全部書き換えてしまう。呉:そうです。金泳三(キムヨンサム)元大統領は日本的なものはすべて壊すということで、桜の木さえも「日本の匂いがする」という理由で伐採してしまいました。櫻井:そうやって歴史の連続性が失われると、どこに立脚点を置くべきかがわからず、自分たちの未来を描けなくなってしまうのではないでしょうか。自分たちが何者なのかがわからない。それで韓国の人たちは本当に幸せなのかと疑問に思います。呉:ですから韓国の人は韓国が嫌いなのです。2006年のアンケート調査では「生まれ変わっても韓国人として生まれたいですか?」との質問に「生まれたくない」と答えた人が67.8%もいました。日本の同様の調査では「日本に生まれてよかった」が94%ですから正反対です。櫻井:世界は今、劇的な変化の時を迎えています。アメリカが内向きになり、トランプ新大統領はどの国が同盟国なのかの区別さえついていないように見えます。 アメリカが後退した空白に付け入ってくるのが中国であり、ロシアです。私は、韓国は日本やアメリカの側に立たなければ健全な生き残りはできないと考えますが、盧武鉉大統領の元側近で北朝鮮シンパの文在寅(ムンジェイン)氏のような人を大統領に選んだら、韓国は本当になくなる可能性は高い。呉:すでにその方向に動いていますね。文在寅氏は北朝鮮と一緒になって、日本やアメリカとは距離を置き、慰安婦問題や徴用工問題でさらに日本を激しく攻撃してくるでしょう。もちろんいずれも「虚構の物語」なのですが……。  盧武鉉政権は、世界の中心は東アジアに移り、その中央にいる朝鮮民族が世界をリードしていくのだと言っていました。文在寅氏も同じように韓国人の民族主義を煽り、北朝鮮との融和・統一を図っていくと思われます。もちろん中国はその隙を逃さず、朝鮮半島全体を影響下に置こうとするでしょう。櫻井:まさに日本にとっても最大の危機です。しかし日本がどう対応すればいいのか、できるのかというと、非常に難しいですね。呉:いくら日本側が韓国に歩み寄っても、侮日に根ざした反日民族主義は変わることはありません。私は日本はこれ以上、韓国に深入りしないほうが賢明だと思います。●さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。●オ・ソンファ/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。『「反日韓国」の苦悩』(PHP研究所刊)、『朴槿恵の真実』、『侮日論』(いずれも文春新書)など著書多数。※SAPIO2017年1月号
2016.12.11 16:00
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今の韓国の姿は朝鮮王朝末期・閔妃の頃に重なる
今の韓国の姿は朝鮮王朝末期・閔妃の頃に重なる
 韓国の朴槿恵大統領は歴代大統領と同じくスキャンダルで民衆に追い詰められている。親友の崔順実被告による国政介入疑惑について国民向けの談話を発表、「任期短縮を含む進退問題を国会の決定に委ねる」と述べ、2018年2月の任期満了を待たずに辞任する意向を表明した。 これは、過去に何度も韓国で見てきた光景である。大統領が何らかの不正をしていたことが退任後に明らかになり、その後は悲惨な末路を送る。朴氏は任期中という異例の事態ではあるが、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と拓殖大学教授の呉善花氏が、韓国ではなぜ同じような悲劇が繰り返されるのかについて語りあった。 * * *櫻井よしこ(以下、櫻井):それにしても、清廉と思われていた朴槿恵(パククネ)大統領が、なぜこんなことになってしまったのでしょう。呉善花(以下、呉):韓国国民にとっては、期待が高かった分、裏切られたという気持ちが非常に強いのです。父親の朴正熙(パクチョンヒ、1963~1979)大統領も母親の陸英修(ユクヨンス、1963~1974)さんも倹約家として知られ、「国父」「国母」として尊敬されていました。私も青年時代に国母さまは服も一番安い生地で作っていたとか、チマチョゴリを自分で縫い直したという話を聞かされたものです。櫻井:その陸さんが1974年に殺害され、朴槿恵大統領はお母さんに代わって“ファーストレディ”としてお父さんに寄り添った。それが彼女の人気の源になっていますね。呉:そうなんです。同時に朴槿恵大統領は母親の清潔なイメージを利用しました。 韓国人は白が好きで潔白の意味があるので、お母さんは白を好んでいました。その潔白を自分のイメージにして、ヘアスタイルもお母さんにそっくりにしている。しかも独身で男性関係がないので、韓国人の多くは彼女を「天使」のようだと考えてきました。だから、就任後しばらくは誰も彼女を批判することができず、問題があっても「宝石にも埃がつくことがある」と言われたほどでした。櫻井:宝石ですか……。そう言えば彼女は「お姫さま」と呼ばれていました。呉:はい。まさにそのイメージで、セウォル号沈没事故(2014年4月)が起きるまで、批判はタブーでした。 お母さんが殺害された後、崔順実(チェスンシル)容疑者の父・崔太敏(チェテミン)氏が朴槿恵大統領に接近したことはすでに報道されている通りですが、それだけでなく、父親の朴正熙氏が暗殺されたのも、崔太敏氏との関係が大きな原因の一つだったと考えられます。 朴槿恵大統領が崔太敏氏に操られ、朴正熙大統領は娘の言いなりになっている。これでは韓国が危ういということで、側近のKCIA(韓国中央情報部)部長が朴正熙氏を暗殺したのです。櫻井:駐韓国のアメリカ大使も、崔太敏氏が朴槿恵氏を「心身ともに完全にコントロール下に置いている」という機密書類を送っていたことを、ウィキリークスが暴露しました。こうしたことから、現在の朴大統領を支持する保守派の中にも、父親が暗殺される原因を作ったのは朴槿恵大統領自身だったという批判が存在します。 朴槿恵大統領は釈明会見で「私はカルトに操られたことはない」と言いましたが、大統領の口からこうした言葉が出てくること自体、異常な事態です。呉:私には今の韓国の姿が朝鮮王朝末期の閔妃(ミンピ、*1)の頃に重なって見えます。閔妃は占いが大好きで、頼れる者は占い師しかいない。そのために莫大なお金を使い、財政難に陥ると民衆から税金を大量に徴収したために、農民の怒りが爆発した。しかし宮廷には少数の軍人しかいないので、閔妃は中国に頼りました。日本も居留している日本人を守るという名目で出兵し、日清戦争につながります。【*1:朝鮮王朝・李氏朝鮮の第26代高宗の期先で、大きな権力を持っていた。朝鮮の伝統的なシャーマニズムである巫俗(ムーダン)に傾倒して怒りを買い、乙未事変(1895年)で殺害された】 閔妃は清についたりロシアに寄ったり、一時は日本にも接近したりと右往左往した挙げ句、朝鮮王朝は滅んでいきました。櫻井:朴槿恵政権と重なりますね。中国と米国の間で右往左往し、中国に寄って行きましたが、中国経済が悪化すると今度は日本に近づいて慰安婦問題で日韓合意して……。呉:韓国は大統領を任期中に逮捕することはできないので、今、野党は大統領選挙を早めることを狙っています。国会はすでに野党が過半数を握っている。今大統領選挙をやれば野党が勝つのは確実ですから、非常に北朝鮮に近い政権が生まれることになります。まさに韓国は滅亡の一歩手前まで来ていると思います。櫻井:韓国の人口は北朝鮮の2倍で、経済力は50倍以上です。私が不思議なのは、その韓国がなぜ盧武鉉(ノムヒョン)大統領の元側近で極端な北朝鮮シンパの文在寅(ムンジェイン)氏のような人を支持し、自ら北朝鮮に近づこうとするのか、です。呉:もちろん韓国の国民も金正恩は偽物だとわかっていますし、独裁には批判的です。しかし、韓国は格差が非常に大きくなり、横領や詐欺が横行して、国民は疲弊している。それは韓国が資本主義に毒されて主体性を失っているからだと野党は言うわけです。 一方、北朝鮮は朝鮮民族の伝統を守り、主体性をもってやってきた。主体思想(*2)は儒教がもとになっていて、「わが民族の伝統」に近いため、韓国人には受け入れられやすい面があるのです。特に若者たちは北朝鮮の“古き良き民族の伝統”を持っている部分に同調している面があります。【*2:北朝鮮の公式な政治思想で、金日成が提案し金正日が体系化したものとされる。「人間がすべての主人である」という考え方だが、事実上、金一族による統治を正当化するために使われている】櫻井:その「民族の伝統」というのは?呉:中国や朝鮮では、男子単系の血脈で構成される同姓の血縁集団のことを宗族と呼びますが、韓国の国家観はそれを拡大したものです。韓国では昔から国王のことを「国父」と言い、その正妻を「国母」と呼んできました。北朝鮮が金日成を「お父さま」と呼んだように、朴正熙大統領夫妻は「国父」「国母」でした。それが韓国人の民族意識なのです。だからアメリカナイズされて格差が広がり伝統的な倫理が崩壊している今の韓国よりも、北朝鮮のほうが伝統が守られていていいということになってしまう。櫻井:うーん、日本人には理解しにくい感覚ですね。●さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。●オ・ソンファ/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。『「反日韓国」の苦悩』(PHP研究所刊)、『朴槿恵の真実』、『侮日論』(いずれも文春新書)など著書多数。※SAPIO2017年1月号
2016.12.09 16:00
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天皇の生前退位 反対論者に共通するのは政治混乱への危惧
天皇の生前退位 反対論者に共通するのは政治混乱への危惧
 8月8日の“平成の玉音放送”で国民に生前退位の意向を伝えた天皇は、この議論の成り行きをどんな気持ちで受け止めているのだろうか──。「憲法にもない生前退位をしたいと示唆されたのはいかがなものか」(平川祐弘・東大名誉教授)「今回の『お言葉』が一種の先例のようになってしまうと、象徴天皇制を維持していく阻害要因になりかねない」(古川隆久・日本大学教授) 安倍首相が設置した私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長・今井敬経団連名誉会長)が行なっている専門家へのヒアリングで、生前退位に対する反対論が噴出している。 ヒアリングは11月7日から始まり、11月30日まで計3回、16人の専門家に天皇の生前退位について“意見”を聞くというもの。14日の第2回ヒアリングまでに11人が登場した。 そのうち6人は基本的に生前退位に反対で、高齢で天皇の公務に支障が出るのであれば、代わって公務を行なう「摂政」を置くことで対応すべきだという意見が目立った。4人は、今上天皇一代に限って生前退位を認める臨時措置法で対応すべきなど、“条件付き賛成論”と考えられる。 そうした特例法での対応ではなく、皇室典範を改正して、「今後、すべての天皇が譲位できるようにすべき」という、天皇の意に沿った立場を明確に表明したのは現在、皇室記者出身のジャーナリスト・岩井克己氏1人だけである。 確かに現在の法律(皇室典範)では天皇の生前退位(譲位)を認めていない。しかし、天皇のお言葉を受けて新聞各紙が行なった世論調査では、生前退位に賛成・容認が「91%」(朝日)、「84%」(毎日)、「81%」(読売)に達し、国民の圧倒的多数が高齢の天皇の思いを受けとめて法改正を求めている。 そうした世論の高まりで法改正を議論するために設置されたはずの有識者会議で、なぜか国民とは逆の専門家の意見が汲み上げられているのである。 反対論者に共通するのは生前退位を認めた場合、皇位継承をめぐる争いや天皇と前天皇(譲位した天皇)との関係が、政治混乱を招きかねないという危惧だ。“有識者”らが会議後に会見で明かした内容や官邸が公開した議事録から、論拠を見ていく。 平川東大名誉教授(比較文学)は有識者会議で「世間の同情に乗じ、特例法で対応するならば憲法違反に近い」と述べた上で、こう指摘した。「元天皇であった方には、その権威と格式が伴います。そのため皇室が二派に割れるとか勢力争いが起きやすくなります。そうなると、配偶者の一族とかその方の実家、その人が属している省庁とか企業とかの政治介入や影響も無視できなくなります」 笠原英彦・慶応大教授(日本政治史)やジャーナリストの櫻井よしこ氏も同じ理由で反対した。「天皇の地位の安定性を損なう恐れがある。前天皇と現天皇の共存は、天皇の統合力の低下を招き『国民統合の象徴』の形骸化につながる」(笠原氏)「譲位については賛成致しかねる。(明治政府の)先人たちは、皇室と日本の将来のため、歴史上頻繁に行なわれてきた譲位の制度をやめた。皇室には、何よりも安定が必要だ。歴史を振り返れば、譲位はたびたび政治利用されてきた。現在の日本で考えられなくとも100年、200年後はどうだろうか。国の在り方は長い先までの安定を念頭に置き、万全を期すことが大事だ」(櫻井氏) 大原康男・國學院大學名誉教授(宗教学)は、天皇の自由意思による譲位を認めるならば、皇位に就かないという「不就位」の自由も認めなければならないという意見があることを紹介した。「高尾亮一さん(戦後の皇室典範改正の起草者だった宮内官僚)によれば、論理的に退位を認めるならば相対的に不就位の自由も認めなければ首尾一貫しないが、当時の皇室典範の審議の中で不就位の自由を主張した者は一人もいない(中略)天皇の制度自体が基本的人権の例外」 譲位を認めるなら、将来「天皇になりたくない」という皇族が出てきたらどうするかの議論もしなければならない、という問題提起だ。写真■日本雑誌協会代表取材※週刊ポスト2016年12月9日号
2016.12.01 16:00
週刊ポスト
ちなみに、第2次安倍政権が発足した日は晴れ
天皇の生前退位 亀井静香氏が首相に「結論出すな」の助言
 安倍首相が設置した私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長・今井敬経団連名誉会長)が行なっている専門家へのヒアリングで、生前退位に対する反対論が噴出している。 ヒアリングは11月7日から始まり、11月30日まで計3回、平川祐弘・東大名誉教授やジャーナリストの櫻井よしこ氏など16人の専門家に天皇の生前退位について“意見”を聞くというもの。14日の第2回ヒアリングまでに11人が登場した。 そのうち6人は基本的に生前退位に反対で、高齢で天皇の公務に支障が出るのであれば、代わって公務を行なう「摂政」を置くことで対応すべきだという意見が目立った。4人は、今上天皇一代に限って生前退位を認める臨時措置法で対応すべきなど、“条件付き賛成論”と考えられる。 安倍首相は有識者会議の議論を踏まえて、天皇の公務軽減や法改正に取り組む方針だが、現在のヒアリングの流れからすると、天皇が“辞めたくても辞められない”という方向に向かっているようにも思える。 過去の有識者会議や専門家のヒアリングが政治決断にどう利用されてきたかを辿ると、“政権の本音”が見えてくる。 安倍首相は2014年4月、消費税を8%に増税する際には、増税推進派のエコノミストを中心に意見を聞き、逆に今年6月の増税再延期の際には増税慎重論者の専門家らを集めた会合を開催して、再延期の“大義名分”にした。「専門家からの意見聴取は、広く意見を吸い上げて判断するように見せながら、政権が考える結論に導くための手法。だからメンバーは官邸が選ぶ。 官邸には安保法制の際、自民党推薦の憲法学者3人全員が違憲論を唱えたため、世論形成に失敗した苦い経験がある。生前退位問題では反対論者を多く選んで、国民に“そもそも法的に問題がある”と問題提起させている向きがある」(自民党ベテラン議員) メンバーの一人もこんな疑問を呈す。「ヒアリングメンバーは60代以上ばかりで、若手や女性が極めて少ない。天皇のご公務の心身へのご負担を正確に知るには、医師などの専門家も呼ばれて然るべきですが、それもいない。有識者会議が選んだのは、保守系の学者やジャーナリストばかりで、最初から反対論ありきのように思える」 生前退位の議論が進む9月中旬、安倍首相と1対1で対面した政界の重鎮・亀井静香代議士が明かす。「私は総理にこう言ったんだ。“有識者会議で議論はするが結論を出すな。サボタージュしろ”とね。総理は聡明な方だから、皇室典範の改正はやらないと思う。天皇陛下がお気持ちを述べられた以上、政府は無視することはできない。だから法改正する“ふり”だけしながら、天皇のご公務を減らしていく。そもそも天皇の仕事は国事行為と宮中祭祀で十分。それができなくなっても臨時代行を立てればいい。生前退位の必要は全くありません」 この会談の後、安倍首相は記者団に有識者会議について「期限ありきではなく、静かにまずは様々な方々からお話を伺いたい」と答えている。※週刊ポスト2016年12月9日号
2016.11.29 07:00
週刊ポスト
日ロ平和条約で日本が中ロ関係に楔を打てるとの考えは早計
日ロ平和条約で日本が中ロ関係に楔を打てるとの考えは早計
 北方領土返還交渉が進んでいる。日本は対ロシアとの関係ばかりに注目しがちだが、ロシア側は、この交渉を通して極東地域における中国の影響力を牽制したい狙いもある。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、日本とロシアが平和条約を結んでも、ロシアと中国との関係が大きく変えられるわけではないと指摘する。 * * * 日ロ交渉の成果は蓋を開けてみなければわかりませんが、仮に日ロが平和条約を締結すれば、両国のみならず極東アジアに大きな変化をもたらします。 日本にとっては北方領土の返還によってEEZ(排他的経済水域)が拡大することに加え、天然ガスの供給元が増え、さらに中国を牽制するうえで「日ロ関係」というカードを持つことになると、希望を語る人たちは少なくありません。 一方、ロシアにとっても日本の経済協力はなくてはならないものであり、それは同時に中国を牽制するための有効なカードになり得るという主張も盛んです。 そのような見方は、ロシアと中国はアメリカに対して共同歩調をとり、蜜月関係を築いているように見えますが、ロシアが中国に対し並々ならぬ警戒心を持っている事実からも生まれています。 特に強い危機感を抱いているのが、極東地域における「人口力」の圧倒的な差でしょう。ロシアの国土面積は日本の約45倍ですが、3分の2がウラル山脈から東の「シベリア」であり、そのうち極東地域だけでロシア全体の36%を占めます。日本の国土の16倍強に及ぶこの広大な地域に住むロシア人はわずか600万人あまりで、しかも人口は減り続けています。 かたや極東地域と国境を接する中国東北3省の人口は1億人を超え、ロシアに移住してビジネスを展開する中国人の数は増え続けています。たとえ領有権がロシアにあっても、このままでは極東地域にロシアのコントロールが及ばなくなり、専門家は人口力で中国に支配されると予測しています。 中国は2005年に北朝鮮の羅津港を租借しました。また、アイスランドの土地も買い漁っています。これらはロシアにとって権益上極めて重要な「北極海航路」に対する、中国の野心の表れです。 中ロは、2014年に「30年間、総額40兆円」に及ぶ天然ガス供給で合意したと伝えられました。しかし、実現に向かっているとの話は聞きません。中国が価格をめぐってロシアの足元を見ていることが原因と考えられます。中ロ関係もまた、お互いの国益のために鎬を削る関係なのです。 しかし、だからといって日ロ平和条約によって日本が中ロ関係に楔を打ち込めると考えるのは、あまりにも早計です。ロシアにとって中国は最大の貿易相手国です。ロシアが日本と友好関係を結んだとしても、中国をあからさまに敵に回すようなことはあり得ません。 この認識のもと、日ロ双方の国益が合致するところを増やし、関係を積み上げていくことです。幸いロシア国民は日本が好きなので、国民感情の面では良好な関係を築きやすいはずです。 ただし、忘れてならないのがアメリカです。今年2月、オバマ大統領は安倍首相との電話協議で日ロ関係の進展に懸念を示しました。他国の外交交渉に口を出す明白な内政干渉ですが、それほどまでにアメリカは日ロ接近に不快感を抱いているということです。このことを日本は過小評価してはならないと思います。 残念ながら今の日本は、一国では領土も国民の安全も守れない脆弱な国です。日ロ交渉もまた、アメリカへの丁寧な説明と説得を徹底し、理解と支持を得なければ、日本にとって深刻な状況が生まれかねません。日米関係が揺らいだときの日本の安全保障は本当に危うい状況であることを、いまの日本人は決して忘れてはならないでしょう。※SAPIO2016年12月号
2016.11.16 16:00
SAPIO

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