国内

高齢者による犯罪が増加 理由に「絆欠ける社会的な孤立」も

 今の日本に顕著な傾向として、高齢者による犯罪が増えているという。65才以上の高齢犯罪者は、1992年の統計と比べると、2012年の暴行罪は約58倍、傷害罪は10倍に増加している。殺人を犯す高齢者もこの20年間で増加しており、2012年の検挙者数は148人に達する。その理由のひとつが孤立だというのだ。

 犯罪に詳しい慶応大学法学部の太田達也教授が言う。

「一般的には経済格差や福祉の遅れが主要な要因とされますが、私はそれだけでなく“社会的な孤立”が犯罪を助長していると思います。実際に調査をすると、犯罪を犯す高齢者は独居世帯や夫婦だけの世帯が多く、家族の支援や絆に欠けている人が多かった。こうした孤立が高齢者を犯罪に向かわせていると考えられます」

 実はどの世代でも、この“喪失感”が犯罪を助長している。

 2008年6月に起きた「秋葉原通り魔事件」(7人死亡、10人負傷)も、この“喪失感”によって引き起こされている。事件を起こした加藤智大被告(30才)は、ネット上のトラブルから掲示板での交流が断たれ、さらに仕事と職場の友人を失うことで社会的な絆を断ち切られると思いこんだ。事件後、手記で次のように心情を吐露している。

〈孤立とは、社会との接点を失う、社会的な死のことです〉(加藤智大著、批評社『解』より引用)

 そして、心の通い合わない母親の存在が事件の遠因であるとも綴る。母親への口答えすら許されなかった彼は、他者とのトラブル時に、相談や口喧嘩という当たり前の解決策さえ持ち合わせていなかったことが窺える。加藤被告はこうも綴る。

〈もし私が人に相談していたなら、事件は回避された可能性があります〉(同引用)

 他人や地域との交流が人の心を育て、人殺しを瀬戸際で止める“最後のブレーキ”となると東京工業大学名誉教授(犯罪精神医学)の影山任佐名誉教授は主張する。

「人間関係が希薄だとちょっとした刺激が引き金になり、重大犯罪にいたります。身の回りに支えてくれる人間関係があり、将来に向けての人生行路がしっかりしていれば、殺人事件は起きない。ギリギリのところで殺人を防ぐことができるのです」

 わが身に降りかかるかもしれない殺人事件をいかに防ぐのか。それはあなたの周囲にもいる、殺人予備軍の人物を孤立させないことにある。しかし、一方でそうした危ない人物との接触を避けることもリスク回避のうえで欠かせない。相矛盾する極めて難しい対応が、今、私たちに突きつけられている。

※女性セブン2013年10月10日号

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン