国内

安倍元首相 維新の看板にとの要請受けたが離党の決断できず

 いまの永田町は国政進出準備を進める橋下徹・大阪市長を中心に動いている。与党議員も野党議員も我先に橋下氏の歓心を買おうとすり寄っているのが現状だ。まるで、玉の輿を狙う女性かのようである。

「本命はワタシよ」――。

 間違いなくそう思いこんでいるのが安倍晋三・元首相だろう。「大阪維新の会が安倍氏に合流を要請」と報じられ、当の安倍氏は本誌前号インタビューで「維新の会と連携をしていくという選択肢を大切にしていきたいと思っています」と熱いラブコールを送った。

 実はこの春、安倍氏は橋下氏と極秘お見合いをして一度は破談になっている。

「橋下市長、松井一郎・大阪府知事ら維新の会の幹部が安倍氏と会談し、直接、『自民党を離党して新党の看板になってほしい』と要請した。しかし、安倍氏は離党を決断できなかった」(維新の会関係者)

 自民党総裁選での再チャレンジをめざす安倍氏は、いわば“昔の男”(自民党)への未練を断ち切ることができなかったというわけだ。

「その後も安倍シンパの松井知事らが安倍氏と橋下氏との間を取り持ってきた。橋下ブレーンには小泉-安倍政権で重用された元官僚が多く、安倍氏には大阪の教育改革は安倍政権時代に改正した教育基本法がベースにあるという自負もある。合流はしないものの、維新とのパイプをアピールすることで自民党総裁に返り咲き、総選挙後に維新の会と連立を組むことを狙っている」(自民党参院幹部)

 こういうのを二股という。

 維新人気に便乗してちゃっかり橋下氏の取り巻きに納まっているのが山田宏・前杉並区長と中田宏・前横浜市長のWヒロシだ。2人は日本創新党を結成して前回参院選に出馬して惨敗したが、現在はともに大阪市特別顧問を務め、維新の会からの総選挙出馬が有力視されている。

 山田氏が保守系の安全保障勉強会の席で維新の会とのスタンスを語った言葉が面白い。

「私はヘルプのつもりで維新の会に関わっているが、中田氏はチーママになったつもりで参加している」

 確かに中田氏の方が前のめり。中田氏は横浜で落選中の元県議や地方議員らと勉強会(北極星の会)を開いているが、そのメンバーの1人が語るエピソードには苦笑を禁じ得ない。

「5月の勉強会で中田さんは、『私は大阪の選挙区で維新の会から出馬することになった』と打ち明けた。それを聞いてメンバーが次はわれわれも維新から擁立してもらえるんだろうと喜んでいると、中田さんは『ないない。自分のことで精一杯だよ』といったからエーッとなった」

 もっとも、大阪からの出馬説はフライング。「維新内部には外様であるWヒロシに警戒感が強く、中田氏の大阪からの出馬は消えた」(維新の会関係者)という。

 すると中田氏は再び横浜での活動に軸足を戻した。8月27日には北極星の会の政策勉強会で「大阪維新の会 維新八策について」というテーマでこう講演した。

「橋下さんは、『中田さんが横浜を変えてくれたから私たちもできている』といっている。大阪は、横浜より3周遅れている。が、橋下さんたちが3年やれば、横浜は抜かれるでしょう」

 と“若旦那のお気に入り”をアピールしているのだ。

※週刊ポスト2012年9月14日号

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