国内

マイナンバー制度 5000億円どころか数十億円で完成と大前氏

 国民一人ひとりに番号を付けて納税情報や年金などの社会保障情報を一元的に管理する「マイナンバー制度」導入に向け、昨年11月の衆院解散でいったん廃案となった関連4法案が復活して、今国会に提出された。2015年6月に番号を交付し、2016年1月からの利用開始を目指すという。その問題点を、大前研一氏が解説する。以下は、大前氏の指摘である。

 * * *
 現在検討されているのは住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)をベースにした世界最悪の行政システムであり、このマイナンバー法案は天下の悪法といっても過言ではない。
 
 マイナンバー制度の目的は、国民全員に強制的にIC カードを持たせて、今は各省庁や自治体が別々に管理している国民の情報を国がまとめて管理することだ。その導入に要する費用は5000億円超とも報じられている。だが、そういう政治家と役人が主導した“上から目線”のシステムでは、壮大な無駄が生じる。
 
 悪しき前例がある。前述の住基ネットや外務省の「パスポート電子申請システム」などだ。
 
 2003年に本格稼働した住基ネットは、従来のITシステムと同様、自治体ごとに富士通、NEC、日立などの“ITゼネコン”がバラバラにシステムを構築しているため、莫大なコストがかかっているうえ、個人情報漏洩などをめぐる反対運動も根強くあって、利用者は非常に少ない。

 2004年3月にスタートしたパスポート電子申請システムにいたっては、2005年末までの利用者がわずか133人で、その間の運用コストが21億円余。パスポート1冊あたり1600万円もの維持費がかかり、2006年度であえなく廃止された。

 電子政府化は「行政コストを圧倒的に削減すること」に主眼を置くべきだ。つまり、国が国民を管理するというお上目線の発想ではなく、国民の利便性を高めるためにはどうすればよいかという生活者目線の発想でなければならない。したがって、これを実行する時は役所の整理統合や公務員の大幅な人員削減を伴うことが大前提だ。
 
 では、具体的にどうするのか? まず、コストが高いだけのITゼネコンは使わず、どういう機能のカードがよいか、国民から広く意見を募る。それを基に、役所や政治家ではなく、国民の代理者のオンブズマンがカードの概要を決める。
 
 そして、そこが定めたスペックに対して国内外からコンペでシステムを公募する。クラウドソーシングで世界中のアイデアを競わせるのだ。そうすれば5000億円などというとんでもない費用はかからず、おそらく数10億円で完成するだろう。システムの運用やメンテナンスも、クラウドコンピューティングで行なえば、非常に安くできるはずだ。
 
※週刊ポスト2013年3月22日号

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン