ライフ

地下水湧出、マグマだまり10km上昇で富士山の噴火近づくか

 日本最高峰が眠りから覚めて大噴火したら、どんな事態が起きるのか。海洋地震学者の木村政昭氏が解説する。

 * * *
 2011年の東日本大震災以降、富士山麓で数々の異変が起きている。

 北東麓の山梨県忍野村では過去10年間、震度1以上の有感地震は一度も起きていなかったが、同震災を境に有感地震が頻発するようになった。

 また山頂をはさんだ南東側の静岡県富士宮市では、同年9月、突然、大量の地下水が湧き出した。その他にも斜面で噴気が観測されたり、山麓の洞窟の氷柱が短くなる現象などが報告されている。

 それらの現象は何を物語っているのか。富士山の火山活動が活発化していると考えるのが自然である。マグマの上昇が斜面や山麓に亀裂を生じさせ、地熱上昇をうながしているとみられる。

 有史以来、富士山は噴火を繰り返してきた。最後に噴火したのは1707年の宝永噴火である。以来、300年以上にわたって地下に巨大なエネルギーをため込んできた。いつ噴火してもおかしくない状態だったが、東日本大震災が引き金を引いたといえる。

 そもそも地震と火山の噴火は表裏一体の関係にある。どちらも地殻を覆う硬い岩盤であるプレートの移動によって起こる。火山の火口の下にはマグマが滞留しているマグマだまりがある。プレートが移動してマグマだまりが圧力を受けると、マグマが上昇して地表に溢れ出る。これが噴火である。

 マグマだまりの位置は液体を伝わる低周波地震を観測することで分かる。以前は低周波地震の震源は地下10数キロメートルから20キロメートルあたりだったが、東日本大震災後は地下数キロメートルのところまで上がってきている。いよいよ噴火のカウントダウンが始まったとみていい。

 富士山が噴火すると、どんな事態になるのか。8000年から1万年ほど前には山梨県大月市や駿河湾まで達する大規模な溶岩流出があったことが分かっている。

 864年の貞観噴火では北西斜面から溶岩が流出し、青木ヶ原樹海や西湖、精進湖が形成された。

 一方、宝永噴火では溶岩はほとんど流出せず、溶岩の塊や軽石、火山灰などの火砕物が空中に大量に放出された。火山灰は約100キロメートル離れた江戸にも達し、10日間降り続いて昼間も薄暗かったという。もし今、宝永噴火と同様の噴火が起きたら、首都圏の水道や交通などのインフラはたちまち機能不全に陥り、多くの人々の健康が蝕まれ、農作物などにも甚大な被害が出るだろう。

 どういうタイプの噴火になるにせよ、最悪のケースを想定して対応策を練っておく必要がある。

※SAPIO2013年5月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン