芸能

三國連太郎さん 役者をやると告げた佐藤浩市に一言「そうか」

 4月14日、急性呼吸不全で亡くなった三國連太郎さん(享年90)は、生涯4度の結婚をした。太平洋戦争で戦地に赴く直前に結婚した最初の妻は、「私はどこの馬の骨ともわからない男と結婚しているのに絶望を感じた」と宣告され、別れた。

 女性に対する不信感を強めつつもふたり目の妻と再婚。女児をもうけるも、彼女は三國さんの大嫌いな大酒飲みだったため不仲に。そしてまだ婚姻中にもかかわらず、後に3人目の妻となるA子さんと同棲を始める。1952年のことだった。そのころすでに三國さんは人気俳優として活躍していた。

「A子さんは東京・神楽坂の売れっ子芸者でした。ふたりの同棲は大きく報じられたんですが、それで夫の不倫を知った2番目の奥さんがすぐに離婚訴訟を起こしたんです。慰謝料請求は当時の金額で200万円。三國さんは財産のほとんどを慰謝料に持っていかれてしまったそうです」(映画関係者)

 A子さんとは1957年に結婚し、その3年後に長男が誕生。それが佐藤浩市(52才)だ。しかし幸せな生活はすぐに破綻を迎える。A子さんは仕事柄、着物や帯を大量に買い込み、毎晩のように酒を飲んで帰る。しかし三國さんはそれに我慢できないこともあって、女優の故・太地喜和子さん(享年48)ら多くの女性たちと浮き名を流し、家に戻らない日々が続いた。

 A子さんとの関係は完全に終わっていたが、三國さんはまだ小学校低学年だった息子を思って何通も手紙を送った。無責任とは思いながらも、自分の思いを伝えるために、冒頭には必ず「これは君が大きくならないと理解できないかもしれないけど」とつけて。

 そして1972年、三國さんはA子さんとの離婚を決める。まだ小学6年生だった佐藤を箱根の十国峠に連れて行き、三國さんはきっぱりこう言い放ったという。

「ここで、お前と別れる。今日から他人になる。一切関係を絶つ。これからひとりで一生懸命生きてくれ」

 三國さんに棄てられ、母とふたりで生活することになった佐藤。しかしその生活も、彼にとっては忘れがたき苦しい日々となった。

「三國さんと別れた後、A子さんはスナック経営を始めたんですが、佐藤さんが中学校に上がると、内縁の男性が現れたんです。思春期だった佐藤さんは、内縁の男性との3人の生活に耐えきれず、“この家に自分の居場所はない”と高校2年生の時に家を飛び出したんです」(佐藤の知人)

 以来、喫茶店でアルバイトをしながら一人暮らしを続けた佐藤は1980年に父と同じ俳優の道に進むことを決意。三國さんを呼び出した早稲田駅のホームで「役者をやりたい」と告げたという。三國さんは「そうか」と一言だけそう言って、電車に乗って別れた。離れ離れになった息子が自分と同じ世界を目指している。嬉しくないはずはない。しかし、三國さんの胸中は複雑だった。

 というのも佐藤がデビューすれば、どうしても「三國の子供」として見られてしまう。しかし俳優の仕事は「一代限り」。自分なりの演技論、文化論を築いていく必要がある。それが三國さんの考えだった。

※女性セブン2013年5月2日号

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