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28歳で余命半年のがん宣告「退院して遊びに」の思いで克服も

「生きる力」は時に奇跡的な物語をつくり出す。42歳の杉浦貴之さんは、猛烈サラリーマンだった28歳の時にがんを宣告された。余命半年、2年後の生存率は0%とされた。しかし、“モデリング”というイメージ療法の成果もあり、今も元気だ。長野県の諏訪中央病院名誉院長でベストセラー『がんばらない』ほか著書を多数持つ鎌田實氏が振り返る。

 * * *
 杉浦くんが病気と闘っていくときの武器は、イメージ療法のほかにもあった。がんの克服本の次に手に取ったのは女性のヌードが載る雑誌だったが、これが元気の素になっていた。

「退院したら風俗店に行こう」という思いもわいてきた。外泊許可が下りる頃、悪友たちが病院にやってきた。
 
「みんなが心配し、同情の目で見られるのがつらかった。友達にも自分自身にも、こんなに元気だからというところを見せたかった。見栄っ張りで煩悩多き人間なんです」と笑う。
 
 結局、入院中、ややフライング気味に友達とノリノリで風俗店に行った。店では帽子をかぶったまま、女性の前で裸になった。
 
 もし「なぜ、帽子をとらないの」と聞かれたら、「ケガをしたから」という答えまで用意していたという。そんな姿を見た女性は、杉浦くんにポツリといった。
 
「がんなんでしょ」
 
 突然、頭をガ~ンと殴られた気がした。そして杉浦くんは号泣した。女性は元看護師で、子宮がんにかかり、摘出手術を受けたと話し、手術の痕も見せてくれた。
 
「私もがんを克服して7年。こんなに元気になったから、あなたも必ず元気になれるわよ」

 そういって励ましてくれたという。入院中に出かけた風俗店で号泣、そして身も心も癒された。奇跡のような話だ。この男、何か持っている。
 
 杉浦くんのように「自分は何か運のようなものが味方してくれているから大丈夫」と思い込む。この思い込みが、治らないはずのがんが治る大きなきっかけになった可能性が高い。

※週刊ポスト2013年10月4日号

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