ビジネス

ブラック企業への意識低下「安心できる状態ではない」と識者

 求人が回復して、いわゆる「ブラック企業」問題がクローズアップされることが少なくなったという。だがそれで全て終わりではない。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が説く。

 * * *
 2013年度の「ユーキャン新語・流行語大賞」でベストテンに入った「ブラック企業」。今野晴貴氏が書いた同名のタイトルの書籍は2013年度の大佛次郎論壇賞を受賞しました。昨年の参議院選挙では政策の論点にもなりました。

 その「ブラック企業」に関して、興味深いデータを発見しました。就職情報会社である文化放送キャリアパートナーズが発表した、『新卒採用戦線総括2015』という資料の中に就活生に対するアンケートの結果が出ています。今年の5月14日〜30日に、ブンナビ!上でのウェブアンケートにより行われ、418名から回答がありました。その中にこんな設問がありました。「ブラック企業を受けないように気にしていますか?」という設問です。

 結果を見てみると、2015年度新卒、つまり今の大学3年生に相当する代においては、「かなり気にしている」32.4%(前年度比9.7ポイント減)、「少し気にしている」45.0%(前年度比1.2ポイント増)、「あまり気にしていない」16.2%(前年度比5.5ポイント増)、「まったく気にしていない」6.3%(前年度比3.0ポイント増)という結果になりました。総じて、ブラック企業を受けないようにしようと意識する人が減っていると言えます。

 ちなみに、同社が同期間に239社に対しておこなった調査では、「“ブラック企業”と思われないために実施していることはありますか?」という問いに対して「ある」という企業はわずか7.7%でした。その取り組みとして「選考結果を速やかに通知する。」(メーカー)「平均残業時間、離職率やネット上に出ている噂などに関し、開示できる情報を開示すると共に説明会などでその理由を説明している」(メーカー)「採用イベントは就業時間内に実施する」(メーカー)などが紹介されています。

 学生におけるブラック企業に対する意識が低くなっている理由は何でしょうか。あくまで推測ではありますが、理由を考えてみましょう。

 明確なのは求人の回復です。リクルートワークス研究所が4月に発表した「第31回 ワークス大卒求人倍率調査(2015年卒)」によると、新卒の求人倍率は1.61倍であり、昨年度よりも0.33ポイント回復しております。これはあくまで予測値でありますし、従業員数、業界、地域によりメリハリがあるものの、回復傾向ではあることは確かです。ブラック企業を選ばざるを得ないという状況を回避しやすいとは言えます。ブラック企業を見分けるノウハウなどが開示されたことも要因と言えるでしょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン