視聴者だけではありません。演じる永作博美と石田ゆり子、ともに「難しかった」と口をそろえて明かしています。「永作は『演じていても非常に混乱して、自分が誰なのか。とにかく難しかった』」(「オリコンスタイル」2014.10.6)。
演じる人たちが混乱するくらいですから、お茶の間の視聴者が腑に落ちるためには、相当な仕掛け方や演出上の工夫が必要でしょう。つまり、唐突で強引な筋立てには、それに見合った凝った演出が要る。それによって初めて、ありえない展開もなかなかおもろいね、と「エンタテインメント」に昇華するのではないでしょうか。
そのように「信長協奏曲」「ごめんね青春!」「さよなら私」の3本を見比べ味わうのも、いろいろと発見があって楽しめる視聴方法です。
何はともあれ、一時「冬の時代」とまで言われたテレビドラマが、存在感を増してきている今。制作陣、役者陣がどん欲に諦めずに挑戦を繰り出してきているからに他なりません。「こうでなくはいけない」という定義や、固定的な概念に縛られず、どんどんつっ走ってほしい。
シリアスもコメディも、本気で勝負をかけてとことん作っていけば……きっと、「ドラマ」という領域が新しい文化の生まれる場になる。その他続々とスタートする2014年の秋ドラマ、期待し楽しみましょう。