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思わぬ交流が持てる「ひとり飯」 常に繋がり求む女性が支持

 ここ数年、独身世帯の増加などを背景に女性のひとり飯が増えているのだという。「あえてひとり」を選択する深~い理由とは? ひとり飯女性は独身だけではなく主婦にもいる。

 都内在住の主婦T美さん(仮名、42才)は、夫と2人暮らし。40才まで不妊治療をしていたが、子供はできなかった。

「それまでに子供ができなかったらあきらめようと夫と決めていたんです」(T美さん、以下「」内同)

 大手アパレルメーカに勤める夫の帰りはたいてい午前様。夕食を食べて帰ってくることが多く、T美さんは自分ひとりのためだけに夕食を作る。

「次第に面倒くさくなってくるんですよね。レトルト食品ばかりになっていました。それをひとりで食べるとむなしくて、ますます切なくなるんです」

 それで勇気を出して近所のラーメン店へ行った。どこにでもあるような店構えで、4人掛けのテーブルが何席かにカウンター席。店のドアを開けた際に店員と客の視線が集まったが、それ以降は気にならなかった。

 頼んだメニューは餃子とラーメン。味は家で食べるラーメンとあまり変わらなかったが、いつもの家ご飯とまったく違った。

「ひとりでご飯を食べているんだけど、周りに人がいるだけで楽しかったんです」

 それからひとり飯の道に進んでいった。最初はラーメンやそばなど短時間の滞在で済ませられる店だったが、そのうちお酒も飲めて長時間滞在できるようなイタリアンバルやスペインバルに足を運ぶようになった。

 T美さんが店を選ぶ際の必須条件がある。それはカウンター席のある店だ。

「カウンター席だと店員さんやお客さんと距離が近くて、仲よくなれる」

 T美さんは地方出身で結婚をきっかけに上京。ずっと専業主婦で暮らしてきたから、周囲に友達があまりいなかった。

 今年の夏、何度か訪れたイタリアンバルでひとり飯をしていた時のこと。注文したピザの最後の一切れがどうしても食べられず、店員に持ち帰りをお願いしたら、隣の同年代の女性が「私もピザ持って帰っていいですか?」と知美さんに続いた。

「お互いひとり飯だったので、それから意気投合して話し込んでしまいました」

 彼女は大手ワインメーカーに勤める5つ年上の女性だった。翌週再び同じ店に行くと彼女がいた。以来、その店で会うと一緒に飲むのが習慣になった。

「先日、酔っ払ったのもあって、不妊治療で子供ができないことを告げたら、『こうしておいしいワインが飲めるからいいじゃない』ってサラッと言われた。一瞬、むかつきましたけど、その一方でそんな考えがあるのかと救われた部分もあったんです。今までそんなふうにあっけらかんと言う人はいなかった。もっと身近で私の不妊治療の苦しみとかを知っていたら、その人も言えなかったと思います。ある意味、適度な距離感があるひとり飯友達だから言えたんですよね」

 人間関係の煩わしさからの逃避、仕事の愚痴、友達作り…ひとり飯に行く理由は実にさまざまだ。社会心理学者の碓井真史さんは言う。

「女性の社会進出や独身世帯の増加により、女性がひとりで外食することが当たり前の社会になってきています。そして、現代はSNSの発展からわかるように女性は常につながりを求めています。ひとり飯が女性に支持されるのは必然といえるでしょう」

※女性セブン2014年11月13日号

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